「太子党は中国経済を独占している」=米紙

2007年、中国共産党元老で、父親の薄一波氏の葬儀に出席した薄煕来(右)

【大紀元日本5月23日】重慶市元トップの薄熙来氏の失脚で再び注目が集まった、深刻化する高級幹部とその家族による汚職。米紙ニューヨークタイムズはこのほど、太子党と呼ばれる中国共産党の高級幹部の子弟が権力と人脈を利用して、中国経済を牛耳っているとの分析記事を発表した。

薄氏が失脚後、60億ドルに上る不正所得を海外に送金したと報じられた。同記事は薄氏以外の太子党メンバーがエネルギー、金融、通信、エンターテインメントなど広範囲にわたり、中国経済を私物化している証拠が次々と浮上したと指摘する。

その一人は江沢民前国家主席の息子である江綿恒氏(61)。米映画制作会社ドリーム・ワークス・アニメーションが上海でアニメーション制作スタジオの建設で、同氏と3.3億米ドル(約264億円)の契約を結んだという。同氏の事業範囲はマイクロソフト、ノキア等とのビジネスのほか、通信、半導体、建築等に及んでいる。

また、曾慶紅前国家副主席の息子である曾偉氏はシドニーで3000万豪ドルで豪邸を購入し、2010年にもオーストラリアのメディアに報じられた。

「国有企業への独占や、自然資源の開発など金儲けの機会が現れると、直ちに太子党に集られてしまう」と同紙は中国上層幹部事情精通する米カリフォルニアのクレアモント・マッケナ大学の裴敏欣教授の話として紹介した。

同記事は、太子党のビジネス活動がほとんど国内で報じられないため、「経済利益を山分けするこの現状は隠されており、共産党の合法性が問われている」と分析し、「ますます多くの国家利益が『赤い貴族』らと絡み合い、市民からの反発も高まっている」と指摘する。ウィキリークスが2009年に公開した米外交公電で、「中国を統治する権力層は既に中国の経済を牛耳っている」と伝えた。

さらに、太子党の影響力は国の政策にも及ぼしているという。引退しても自身の利益を守るために、影響力を利用して国家政策に口出しする高級幹部が少なくないという。

しかし、常態化する高級幹部とその家族による不正に対して、政府は積極的に対策を講じないだろうと指摘し、「現職または引退した指導者らの利益がすでに複雑に絡み合っているためだ」としている。

腐敗に対する市民の不満が高まる中、2010年、当局は全ての幹部及び家族全員の不動産や有価証券の保有状況を党に報告することを義務付けたが、申告内容は非公開のため、国民によるチェック機能は働かず、腐敗撲滅への効果が期待できない。

(翻訳編集・余靜)
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