【漢詩の楽しみ】聞楽天授江州司馬(楽天の江州司馬を授けられしを聞く)

【大紀元日本8月26日】

残灯無焔影憧憧
此夕聞君謫九江
垂死病中驚坐起
暗風吹雨入寒窓

残灯(ざんとう)焔(ほのお)無く、影(かげ)憧憧(どうどう)。此(こ)の夕(ゆう)べ、君が九江に謫(たく)せらるるを聞く。垂死(すいし)の病中、驚いて坐起(ざき)すれば、暗風(あんぷう)雨吹いて寒窓(かんそう)に入る。

詩に云う。わずかに燃え残った灯は、もう明るい火はなく、ただ弱々しげな光をゆらしている。この夕べ、君が九江に流謫(るたく)されたという知らせを聞いた。死期が間近い病中の我が身だが、驚いて思わず起き上がり、寝床の上に座って居住まいを正す。すると暗い屋外から、雨まじりの風が、寒々とした窓に吹き込んでくるのだった。

この詩の作者は中唐の詩人、元稹(げんじん、779~831)。詩の題名に見える「楽天」は白居易の字(あざな)であるから、この詩は元稹から白居易への友情の一首である。

唐という時代を、文学史では初唐・盛唐・中唐・晩唐の四つの時代に区分する。

李白・杜甫・王維などを生み、詩が爆発的に隆盛した盛唐は、もはや過ぎた。白居易と元稹は、唐王朝に陰りが見え始めた中唐を代表する詩人に当然含まれる。

彼らは、平易で分かりやすい表現を用いて詩をつくることに努めるとともに、風諭詩や社会批判の詩も多く遺した。詩という文学をもって社会救済を目指し、その志を共有した2人だったが、一方では、元軽白俗(元稹は軽々しく、白居易は俗っぽい)などと酷評されもした。

ただし、と付記せねばなるまい。酷評はまた彼らの作品が広く受け入れられたことに対しての、ある種の嫉妬のような反応であるから、それを理由に彼らの作品の評価を下げる必要はない。

元稹は、白居易より7年ほど後に生まれ、15年ほど早く逝去した。第3句に見える元稹のふるまいは、病中の彼にできるせめてもの、多分に敬意を込めた友情の表現だったのかも知れない。

 (聡)