<在日中国人の目>中国、真昼の暗黒 大気も政治も「視界10メートル未満」

【大紀元日本10月22日】中国北部の大気汚染に関するニュースがまた各新聞の見出しに躍り出た。今回もただ者ではなさそうだ。アーサー・ケストラーの小説のタイトル「真昼の暗黒(Darkness at Noon)」という言葉がぴったりのようだ。「PM2.5の数値は国際安全基準の40倍」とか「1立方メートル当たり1000マイクロ・グラムの観測上限を超えた」とか「視界10メートル未満」とか、とにかく「最悪」らしい。

その「元凶」は、この時期に北部で供給が始まったスチーム暖房「暖気(ヌアンチー)」システムにあるとも報じられている。「暖気」は、地域ごとのボイラー室で湯を沸かし、配水管を通して各家庭にある鉄パイプみたいな暖房用放熱器に届けるシステムだ。厳冬期の北部では重宝され、筆者も、電気代や面倒な灯油入れを気にせず、シャツ一枚で過ごせた暖気生活が懐かしい。

何十年も続いてきたこのシステムが突如、大気汚染の元凶として登場したことには驚いた。なにせ地球温暖化がまだ叫ばれていなかったかつての北部はもっと寒く、ボイラーの火力ももっとあったはずだ。そして、その時の空は澄んでいて、こんな「真昼の暗黒」的な様子ではなかった。すでに限界にまで進んだ大気汚染に、石炭のひと燃えが決定的一打になったのだろうか。

なにも東北だけではない。北京でライブを予定していた米国の人気ジャズ歌手、パティ・オースティンさんがぜんそくの発作で18日の出演を中止していた。今月初めにも、北京で開かれたテニスの中国オープンに参加した選手らが空気に悩み、「呼吸なんかできやしない」と自身のブログに書き込んだ。有名人にもとどまらない。中国の空気にある程度慣れている筆者の子供も夏休みに帰省していた1週間、咳が止まらなかった。特に視界が悪いと感じないフツーの日でもPM2.5は平気で90を上回っていた。

ひどい空気で外出できなくなったネットユーザーらはブラックユーモアを忘れない。「中国はすでに、アメリカを含む世界列強も匹敵できない武器を開発した。それは致命的で超大規模な大気汚染だ」「アメリカの子供に比べ、中国の子は小さい時から厳しい大気汚染の洗礼を受けているから、スタート時点ですでに勝っている」

「視界10メートル未満は大気だけでない」と政治の「暗黒」をほのめかしているユーザーもいる。ごく穏健な改革を主張する市民運動家がこのほど相次いで逮捕されていることがその象徴だ。真っ暗闇に包まれた21日、「公務員の資産公開」や「教育機会の平等」などを掲げる著名な企業家・王功権氏は「公共秩序を乱した罪」の容疑で逮捕された。王氏とともに運動を展開した法学者・許志永氏も8月に逮捕されている。また18日には、かの北京大学が、著名な経済学者で「特権階層への富の偏在」などを批判する改革派教授の夏業良氏を解雇した。

異なる声に耳を傾けるどころか、政権は取り締まりをますます強化している。政治の恐怖度をはかるメーターがあれば、中国のこの頃の数値はきっと「観測上限」を振り切っている。

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