「白血病という病」に向き合うために

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白血病」という病気があります。
半世紀前であれば、この病名には、当時の医療で完治がかなう希望的な響きはなく、むしろ「不治の病」として、小説や映画における主人公の「残された人生の時間」が描かれる題材にもされていました。

病名をとりまく「認識の変化」

もちろん現在でも白血病は、治療に高度な技術と慎重を要する難病であることに変わりはありません。

著名人でも、不幸にしてこの病に罹り、なかには命を短くされた人もいます。
歌舞伎役者の十二代目市川団十郎さん。歌手で舞台女優の本田美奈子さん。
女優の夏目雅子さんが、その病名を告知されることなく、透き通る水晶のような美しさのまま、27歳で世を去ったのは1985年9月11日でした。

医療の進歩とご本人の懸命な闘病の結果、病気を克服した人も、もちろん多くいます。
俳優の渡辺謙さんが、約1年の闘病を経て仕事復帰し、その後は日本を代表する国際的スターになったことはよく知られています。

私たちの記憶に新しいのは、なんと言っても競泳の池江璃花子選手でしょう。

豪州で合宿中だった2019年1月に白血病であることが判り、以来、過酷な闘病生活が始まります。2020年の東京五輪を目指し、早くから金メダル候補と言われてきた18歳のアスリートにとって、それはあまりにも非情な運命と誰もが思いました。

一時は、鍛え上げた筋肉がすっかり落ち、別人のように細くなった池江選手でしたが、その気持ちはまっすぐ前へ向いていました。

練習を再開した当初は、再びプールに入って泳げる喜びを語るだけでしたが、たちまち競技者としての闘志と実力を取り戻し、見事に復帰を果たした池江選手の姿に、私たちは、海から昇る朝日のような生命の輝きを見せてもらいました。

2021年7月に延期開催された「2020東京五輪」では、メダルにこそ手が届かなかったものの、池江璃花子選手の力泳が、金メダル以上の感動を日本人にもたらしたことは言うまでもありません。

そうした経緯もふくめて、白血病に対する日本人の認識は、この数十年でずいぶん変わったようです。

白血球を侵す「血液がん
 

現在でも白血病には、「血液のがん」という少々分かりにくい表現が冠せられます。これは「血液中の白血球に異変が生じて、悪性腫瘍(がん)になった」ことを指しています。 

白血球は、人間の免疫機能に直接関わるリンパ細胞で、体内に侵入した細菌ウイルスに対抗して闘い、自らを犠牲にして侵入者を無力化する勇猛果敢な血液成分です。

白血病は大きく急性と慢性に分けられ、急性と慢性は、さらに異なるタイプの亜型に細かく分けられます。急性リンパ球性白血病は若い人、特に子供によく見られるのに対し、成人の白血病は骨髄性白血病が多くなっています。中年から高齢者へ、年齢が上がるにつれ骨髄性白血病の発症例は増加します。

白血病を発症する危険因子には、どのようなものがあるでしょうか。

これには、環境的要素と遺伝的要素の両面が考えられます。環境からの因子としては、放射線ベンゼンあるいはその他の化学物質、一部の不良な建築材料から発せられる有毒物質、大気汚染、喫煙などがあります。

もう一つ、考えられる誘因は、過去に受けた化学療法の副作用です。なんらかの必要があって化学療法を受けた患者は、白血病になる確率が高く、しかも予後が悪いとされています。

ただし、これらの条件は、いずれもリスクファクター(危険因子)の一つとして挙げることはできますが、白血病の根本的な原因は、まだよく判っていないのが実情です。

感染防止の「基本的な努力は必要です」

さて現在、新型コロナウイルスの感染拡大が続き、とりわけオミクロン株の広がりは世界各地で「爆発的」とも言えるほどです。

そのような中、ワクチンの追加接種を進める各国政府の動きもあります。現状において、従来のワクチンがどれほど感染防止あるいは重症化防止に有効であるかは未知数ですが、「血液のがん」とも言われる白血病患者は、そもそもワクチンを接種できるのでしょうか。

それには、こう答えましょう。ワクチンとは、人体に病害をもたらすウイルスに対抗できる抗体を体内につくり、免疫力を高めるものです。本来であれば健全な白血球があり、その白血球が正常に機能して免疫力を発揮するのですが、今は「血液のがん」である白血病によって白血球が十分に機能できなくなっています。

ワクチン接種の是非は、他者から強制されるものではなく、本人の意思による権利です。

そこで得られる結論としては、白血病患者がワクチンを接種できるかどうか、および接種が有効であるかどうかは、医師にも即答できる問題ではないため、「主体である患者が、医師とよく話し合ってください」ということに尽きます。

いずれにしても白血病患者は、白血球レベルがすでに低くなっており、ウイルスへの抵抗力が通常より低下しています。そのため、新型コロナウイルスに限らず、季節性のインフルエンザウイルスなども含めて、感染防止には十分に配慮する必要があります。

白血病患者(その他のがん治療中の人も含めて)は、人の多いところでは必ず機能性の高いマスクをつけ、手洗いや手指の消毒に努めてください。

(翻訳編集・鳥飼聡)