【佛家故事】 輪廻転生(二) ー父親が羊(娘)で饗するー

【大紀元日本6月9日】唐の貞観(じょうがん)の時代、都に韋慶植という人がいた。彼の娘は幼い頃に他界し、夫婦共々非常に悲しんでいた。

2年後のある日、韋慶植は客を招くために羊を買った。その日の夜、韋慶植の妻は、亡くなった娘が黒のスカートに白いシャツを着て現れる夢を見た。髪に一対の玉かんざしを挿した娘は、悲しげな顔で話した。「私は誕生日の日に、お金をこっそり盗みましたが、その事について誰にも告げませんでした。今は羊に生まれ変わって、それを返しに来たのです。明日の朝、殺されます。お母さん、どうか私の命を救って下さい」

母親は驚いて目を覚まし、買ってきた羊を見に行った。この羊は下半身が黒く、上半身は白く、頭に白い毛が二点あって、玉かんざしのように見える。妻は、その羊を殺さないようにと料理人にきつく言い渡した。しかし、夫の韋慶植はそのことを知らず、客たちが来ているのに料理が出ないことに腹を立てた。料理人は仕方なく羊を殺し、おいしい料理をこしらえた。

しかし、羊肉の料理がテーブルに運ばれてきても、客たちは箸を動かそうとしなかった。韋慶植が理由を聞くと、客たちは口を揃えて言った。「先ほど殺された羊は、遠くから見ると、まるで少女のようでしたよ」

韋慶植は驚き、中に入って妻に問いただした。妻は急いで韋慶植に夢の話を告げたが、すでに遅かった。韋慶植は羊に生まれ変わった娘を殺してしまったことに気づき、悲痛のあまり間もなく病気になって亡くなった。

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周氏は次のように言う。「この事は以前『安士全書』の中で述べた、筆商人の娘の話と似ている。両方とも、家族の金を盗み、羊になって罰を受けている。しかし、筆商人の娘は救われ、韋慶植の娘は殺された。これは、幸運であるか不幸であるかの区別ではない。筆商人の娘は盗んだ金をまだ使わず、韋慶植の娘は盗んだ金をすでに使ったので、その結果も違うのである」

清・周思仁の『安士全書』より

(翻訳編集・李正賢)