住宅価格、下落止まらず 中国経済は深刻な鈍化へ

【大紀元日本11月28日】中国政府が相次いで景気対策を打ち出したにもかかわらず、10月の住宅価格は依然として前年比2.6%下落、2011年以来最大の下落幅を記録した。深刻な不動産不況は中国の経済成長を脅かしている。

18日付ロイター通信は、住宅価格が下落し、金融不安が広がり、投資家は投資先を見つけられずにいると報じた。多くの経済学者は、不動産開発会社が在庫削減に追われており、市場の調整が今後も続く見込みだとの認識を示した。

米PNCフィナンシャル・サービシズ・グループのエコノミスト、ビル・アダムス(Bill Adams)氏は、「中国の不動産市場はまだ調整期の下落段階に置かれている」とし、「不動産市場の調整期は、今後5〜7年間続くだろう。つまり、今回の下落は、少なくとも2015年か2016年まで続くことになる」と述べた。

住宅価格の下落が続くなか、中国政府は9月、住宅ローンの頭金要件を緩め、ローン金利も引き下げた。当局は景気刺激に向けて大きな一歩を踏み出したが、中国経済は依然として不動産市場の脅威にさらされている。

国家統計局によると、9月に主要70都市のうち、69都市の新築住宅価格が前月比で下落を見せた。9月と変わらず、10月には69都市が前月比で下落した。しかし、前年同期比の下落都市数は、9月の58都市に対し、10月は67都市に増えた。北京の10月の住宅価格は前年同期比1.3%下落し、2012年10月以来初の下落となった。

国家統計局の学者・劉建偉氏は、「不動産業者が在庫を減らすため販売促進や値引きを実施することによって、金融緩和政策の実施は不動産購入の需要を刺激することができる。そのため、10月の新築住宅平均価格は前年同月比0.8%下落、9月の1%減より下落幅が縮小した」と述べた。

ロイター通信社によると、今年4月以来、中国政府が一連の景気刺激策を発表したが、中第3四半期(7〜9月)の実質GDP成長率は前年同期比7.3%で、2009年以来の低水準だ。2008年の世界金融危機以降で最も低い伸び率となる。

9月末、銀行の不良債権率は6月より0.09ポイント増の1.16%まで上昇した。成長鈍化と不動産市場の冷え込みをきっかけに、金融面のリスクが急増しかねないという懸念が浮き彫りになっている。不動産市場はまた、幅広い産業分野に大きな波及効果を及ぼしている。

米日欧=対中直接投資が急減

中国への海外直接投資(FDI)は、不動産とともに中国経済を支える「2本の柱」とされている。対中直接投資の推移は外国投資 のパターンが変わったと物語っている。

今年1月〜10月期の対中直接投資は、前年同期比マイナス1.2%の959億ドルとなった。投資国トップ10のうち、韓国からの投資は26.4%増、英国は32.4%増となった。一方、日本からの投資は42.9%減、米国は16.2%減、欧州連合は23.8%下落した。

鉄鉱石の先物価格が暴落

統計によると、住宅価格の下落現象が深刻化した後、鉄鉱石と鉄鋼の先物価格は史上最低水準まで暴落した。最大消費国の経済が落ち込んでいることを示す有力な証拠となる。中国では鉄鉱石価格は1トンあたり約76米ドル(約9000円)、年初来40%ほど大幅に急落し、2009年以来の安値を付けた。

大手鉱山会社リオ・ティント (Rio Tinto) やヴァーレ(Vale)などの主要な鉄鉱石サプライヤーが価格下落の打撃を受けている。不動産市場の不況は鉄鉱石市場の崩壊にもつながるとの懸念が広がっている。

(翻訳編集・王君宜)
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