2022年冬季五輪 候補地は独裁政権2カ国 IOCは忌避

【大紀元日本2月20日】中国は2022年冬季オリンピック開催に意気込んでいる。欧州のライバル候補地が財政難や内政悪化を理由に次々と招致レースから辞退し、中国国民の95%が開催を支持していることから、北京が最有力候補地とされている。しかし、国際オリンピック委員会(IOC)は最近、環境基準や人権問題を考慮にいれた候補地審査の改革を行い、北京開催を忌避する姿勢を見せている。

冬季オリンピックは規模の巨大化により運営困難が生じている。IOCは2014年12月、5兆円を投じて国の財政に痛手を負ったソチ五輪開催国ロシアを例にして、選考ルールの改革を行った。より適当な金額で開催されること、差別的な表現の禁止、開催国は自然環境、市民の労働力、人権保護が確立していなければならない、などの要素を開催国選定の目安に加えた。

しかし、この改革は2022年冬季オリンピックの開催国選考に功を奏していない。候補地は北京と、旧ソ連のカザフスタンのアルマトイだけで、一党独裁政権が長らく続く2カ国しか残っていない。これまでにオスロ、ストックホルム、ミュンヘン、クラクフ(ポーランド)、リヴィヴ(ウクライナ)が一度は名を挙げたものの、国民の反対や財政難、政情不安などを理由に招致レースから離脱した。

カザフスタンは、旧ソ連崩壊後から今日まで、カザフ共産党党首ナザルバエフ氏が25年の独裁体制を敷いている。中国の習近平国家主席が唱える「シルクロード構想」のなかで交易路の要となる国とされ、中国が鉄道や道路などインフラに数百万元を投じている。

人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチのミンキー・ウォーデン氏は「IOCの改革は、中国とカザフスタンへの布石」と指摘している。ウォーデン氏は2008年北京大会と2014年ソチ大会の開催前、両国の反体制派と労働者への迫害を指摘した人物だ。「独裁主義的な2カ国が、国のイメージを良くするために招致に向け争っている。これがオリンピック精神か」と非難した。

「人権尊重と平和維持」がオリンピック憲章には記され、「平和の祭典」と例えられる。人権弾圧や表現の自由の規制が厳しい中国は開催に不適当な国として、2008年の北京大会前には反対運動が世界で巻き起こった。IOCは中国当局に人権状況の改善を約束させ、開催を許可したという。

しかし、中国の人権問題は一向に改善されていない。最近の調査報告書では、1989年以後、悪化と退行を重ね、「最悪レベルにまで下がった」と指摘した。湖北省に拠点を置く市民権と生活環境監視グループは「社会安定維持の名のもとで、中国はますます抑圧が厳しくなり、より残忍に、ますます非人道的になった」と団体創始者・劉飛躍氏は米政府系ラジオ・フリー・アジアの取材に答えた。

中国環境保護省が2日に発表した2014年大気汚染状況によると、中国74主要都市のうち、微小粒子状物質「PM2・5」など汚染物質の年間平均濃度が標準の環境基準内に収まったのは、8都市のみだった。オリンピック招致代表の王安順・北京市長は1月、「中国の悪名高い大気汚染は人を街に住めなくした」と述べた。にもかかわらず、オリンピック開催は「北京に理想的な利益をもたらす」ため、招致活動を続けるという。

中国オリンピック委員会広報部によると、具体的なインフラ整備も用意している。雪山競技の会場候補地を北京に近い延慶と張家口に定めた。現地ではすでに2022年オリンピック開催招致の宣伝看板が掲げられている。しかし、雪は年間で平均5センチ積もる程度で、北京同様に乾燥が続く地域でもある。広報部は、人工雪を作る水を引き込むために中国南部から約1280キロのパイプを建造する計画を立てている。

IOC評価委員会によるアルマトイの現地調査はすでに終わっている。18日、同委員会は記者会見で「大会を成功させる要件を備えている」とアルマトイを好評価した。3月下旬に北京を現地調査する。最終的な決定は7月末、マレーシアのクアラルンプールで開かれるIOC会議で決定する。

(翻訳編集・佐渡 道世)
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