今までの認識では、血液中の低密度リポ蛋白LDL)群(俗に言う悪玉コレステロール)が正常値より高い人は脳卒中になりやすいと思われていたが、脳卒中患者の中にはLDL値が高くない人が多くいる。最近の研究では、LDLの中に含まれるL5(陰性荷電=マイナスの電荷の強いLDLの分画)こそが心脳血管疾患の本当の元凶であることが分かった。この研究結果は、先日行われた台湾医学会第109回総会ならびに2016年台湾連合医学会学術講演会で発表された。

この研究を行う中国医科大学の沈明毅助教授は、コレステロールと脳卒中との関連性について次のように指摘した。「従来、LDLは血管の壁に堆積してアテローム(粥状の塊)性動脈硬化を起こし、心脳血管性疾患を誘発すると認識されていた。しかし、血液中の総コレステロール、中性脂肪、LDLのいずれも高くないのに、急性脳卒中に罹る人が多くいる」「今回、40人の急性脳卒中患者を対象に行った血中総コレステロール、中性脂肪、LDLはいずれも高くないが、急性期脳卒中に罹った後、48時間以内の血液検査の結果、血中L5の量は、いずれの患者も正常値の40倍ほどに達していた」

この結果を踏まえて、沈助教授は次のように説明した。「LDL分画の中に動脈硬化への悪影響が強いものと弱いものがあり、L1、Ⅼ2、Ⅼ3、Ⅼ4は弱いが、L5の影響はかなり強い。ゆえにL5こそが心脳血管疾患の本当の元凶である。つまり、血中のLDLの総量は高くなくても、Ⅼ5だけ高ければ、やはり脳卒中を引き起こすリスクが高くなる。

更にマウスを使って行った実験結果から、L5は酸化LDL受容体(LOX-1)を介して、血管の内壁細胞を破壊し、血小板凝集の活性化を促進して、アテローム性動脈硬化症以外に血栓を起こすこともある。動物の実験では、脳血栓発生時に、L5の血中濃度が高いほど、脳損傷の範囲も広くなる傾向がある。

「この研究結果が、将来脳卒中発生リスクの判断に使われることを期待している」と沈助教授は語った。

(翻訳編集・利学)