中国の「一帯一路」構想には経済援助と経済開発の名目で、その経済圏にいる各国を掌握し、圏内で中国式の覇権主義を推し進め、北京を中心とした世界経済ネットワークを形成していく狙いと中国の生産過剰を海外に移し、中国経済の衰退危機とリスクを転嫁させるという中国の思惑がある 。画像はAIIB調印式のもの(Takaki Yajima-Pool/Getty Images)
評論・陳破空

中国「一帯一路」経済圏構想、その狙いは?

今月14~15日に、中国北京でシルクロード経済圏構想の「一帯一路」サミットを開催される予定。在米中国政治評論家の陳破空氏は4月20日、自由アジア放送(RFA)に寄稿し、中国当局は「一帯一路」を通じて政治的かつ経済的な力を深める狙いがあると分析した。以下はその抄訳だ。

今月中旬、中国北京では「一帯一路」サミットが開催される予定だ。現在、アフリカや南アジア、中央ヨーロッパなど28カ国の首脳が出席すると確認されている。一方、多くの先進国や、インド、ブラジルなど新興国の首脳が出席しないとみられている。

これは「一帯一路」経済圏構想を高く掲げ、意気溢れる中国当局にとっては、非常に殺風景な状況に違いないだろう。

中国当局は「一帯一路」を実現するために、アジアインフラ投資銀行AIIB)の創立を主導し、2015年12月に創設メンバー57カ国で発足させた。しかし、世界第一位の経済大国のアメリカと第三位の日本はいまだに、AIIBへの参加を見送っている。

日本政府は中国当局に、AIIBで起こりうる腐敗問題に対してどのように回避していくのか、また債務不履行リスクをどのように対応するのかと問い合わせている。ところが、中国当局は回答せず、これが日本が参加を見送った理由の一つとなった。また、中国主導のAIIBは、日本主導のアジア開発銀行(ADB)に対抗する目的で創設されたことも、日本が見送った原因でもある。

中国政府が提唱した「一帯一路」構想とは、中国西部と中央アジア・欧州を結ぶ「シルクロード経済帯」(一帯)と、中国沿岸部と東南アジア・インド・アフリカ東を結ぶ「海上シルクロード」(一路)で、世界規模の経済圏を形成していくことを指す。

この構想は、表面的に7世紀の「シルクロード」の理念を継承しているが、民間で形成するような国際商業用ロードと違って、「一帯一路」構想には中国当局の政治的かつ経済的な2つの狙いがある。

その一つ目は、経済援助と経済開発の名目で、その経済圏にいる各国を掌握し、圏内で中国式の覇権主義を推し進め、北京を中心とした世界経済ネットワークを形成していく狙いがある。二つ目は、中国の生産過剰を海外に移し、中国経済の衰退危機とリスクを転嫁させる狙いだ。

「一帯一路」最初のプロジェクトはパキスタンで、大型水力発電所を建設している。中国側は「中パ経済回廊」の一環だとして、優先的に発展させると示している。パキスタンは北朝鮮を除き、中国の唯一の盟友と言えることから、中国当局は中国共産党に服従する国を優先に投資するのだというシグナルを送っていると考えられる。

このような意図は東ヨーロッパのチェコにも見える。中国とチェコは今年2月から「一帯一路チェコ年」として、大規模なイベント開催を共同で行い始めた。中国が東欧諸国の中で、チェコへの投資を優先するのは明らかだろう。

「一帯一路」は、英語に訳すと「One Belt and One Road」というのだが、今年、外交部の王毅部長は記者会見の際に、「Belt and Road」に変えた。明白に「中国が主導する」というイメージを払拭しようとしている。しかし、中国語に訳せば「帯と路」になるので、実にちぐはぐだ。

AIIBにせよ、「一帯一路」にせよ、実際に中国当局のもう一つの目的が隠されている。これは、中国共産党高官らが汚職で得た巨額な資金を、「対外投資」を通じて、国際上で合法化しマネーロンダリングをすることだ。この方法は今、世の中で最も巧妙なマネーロンダリング方法であるかもしれない。

(翻訳編集・張哲)

関連記事
 【大紀元日本5月21日】米国がパキスタン政府への通告なしにビンラディン容疑者の殺害作戦に踏み切ったことで、中国とパキスタンの急接近を促したようだ。パキスタンのギラニ首相は17日から4日間の日程で、中
 【大紀元日本11月7日】香港メディアのアジア・タイムスは先月26日、パキスタンは、同国南西にあるグワダル港に中国海軍基地建設を中国に求めていると伝えた。対テロ対策と目してパキスタン北部の軍事基地建設
【大紀元日本2月20日】パキスタン首都イスラマバードで18日、同国南西部の要衝グワダル港の運営管理権を中国国有企業に移行する調印式が行われた。同港はインド洋アラビア海の交通・貿易・軍事の重要拠点とされ
2014年に起きたマレーシア航空370便墜落事件は今も多くの謎が残っている。このほど、米国逃亡中の中国人富豪・郭文貴氏から同事件に関する驚愕な証言が飛び出た。中国共産党の内部事情を暴露してきた同氏は9月に入り、Youtubeの動画で、江沢民氏の息子・江綿恒氏が複数回にわたり腎臓移植の手術を受けたと発言した。さらに、2014年に起きたマレーシア航空機失踪事件は移植手術の関係者が多数、同便に搭乗していたため、江沢民派が意図的に墜落させたと証言した。
フィリピンのドゥテルテ大統領は最近、共産党とそのゲリラ部隊「新人民軍」をテロリストに位置付けるとの宣言に署名した。大統領によると、共産党勢力は数十年にわたり政府転覆を画策し、多数の軍・警察関係者と一般市民を殺害してきた。両組織は米国政府により2002年にテロ組織と認定されている。
米連邦議会議員の間では、中国共産党政権に対する懐疑的な見方が強まっている。共和党ダナ・ローラバッカー下院議員はワシントン市内で開かれた「中国における人道犯罪と脱党ムーブメント」に参加し、中国共産党の圧政について言及した。
米ニューヨーク州の検察当局がツイッターで偽アカウントを販売する企業デバミー(Devumi)社を調べており、中国国営の新華社通信が重要顧客の一つであると1月28日、ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)が報じた。
中国の第3期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第1回会議は20日閉幕した。開催期間が16日間にわたる異例の長さとなった今回の全人代会議では、国家主席・副主席の任期撤廃をめぐる改憲案が通過し、国家副主席や最高行政機関である国務院総理・副総理などの主要人事が決定された。
近年中国でのシェアリングエコノミーが急速に拡大している。自転車シェアリング、カーシェアリング、携帯充電器シェアリング、雨傘シェアリング、トイレットペーパーシェアリングなどなどの企業が次から次へとと誕生した。