焦点:米韓「為替条項」、日本は静観 米中間選挙で不透明感も

[東京 29日 ロイター] – 米韓自由貿易協定(KORUSFTA)で協議中の「為替条項」が、市場の一部で円高要因として意識されている。通貨の競争的な切り下げを禁じる取り決めが、将来的に日本にも適用されるのではないかとの連想が働くためだ。

日本政府は当面静観する構えだが、11月に中間選挙が行われる米国の出方が読み切れない情勢は続く。

米政府によると、韓国との協定再交渉を巡っては、通貨安競争を阻止する付属文書が追加される見込み。もっとも、協定そのものには盛り込まれないため、貿易と為替政策は直接リンクせず「あくまで為替介入を行った際の透明性を高めるもの」(日本政府関係者)との解説が多い。

20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議などでも、競争力強化を目的とした通貨安誘導はしないことが国際的に合意されており「米韓の取り決めは、これを逸脱しない」(財務省関係者)という「解釈」が、日本政府の理解と言える。

ただ、米国内では貿易赤字の原因を為替に求める声が伝統的に根強い。このため、日本政府内にも、貿易と為替を直結させようとする米国の考え方に対する警戒感はある。

ある財務省幹部が指摘する不確実要因は、米国の中間選挙だ。大統領選の中間年に行われる上下両院の選挙で、トランプ大統領に対する事実上の信任投票となる。

同幹部は「中間選挙が近づくにつれ、米国が日本の為替政策などをやり玉に挙げる可能性はあるだろう」と述べ、トランプ氏の国内アピールが為替市場に与え得る影響を懸念した。

 

(梅川崇 編集:田巻一彦)

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