焦点:「北」と「通商」の取引に身構える日本、17日から日米首脳会談

[東京 16日 ロイター] – 日本政府は17、18日の日米首脳会談で、米側が北朝鮮と通商の2つの問題を絡めてくることに警戒を強めている。米朝首脳会談で拉致問題などを取り上げてもらう代わりに、貿易赤字の削減で米側から譲歩を迫られる可能性があるとみている。国内で支持率急落に直面する安倍晋三政権は、外交で挽回したいところ。安倍首相が自負するトランプ大統領との良好な関係が試される。

<TPP復帰は「えさ」か>

日本側は今回の首脳会談で、北朝鮮問題を主な議題にしたい考え。米政府高官は、米朝首脳会談を控えるトランプ大統領が、安倍首相から助言を得たがっているとしている。

だが、日本政府関係者は、トランプ氏が今年秋の米中間選挙前の得点稼ぎとして、対米貿易黒字を抱える日本との通商問題を大きく取り上げてくるのではないかと身構えている。

トランプ大統領は会談が近づくにつれ、経済問題で日本への圧力を強めつつある。13日には突如として環太平洋連携協定(TPP)に復帰する可能性を表明したかと思えば、その後すぐにツイートし、今度は「われわれは日本との2国間交渉に向け動いている」と揺さぶりをかけてきた。

「米国はTPP復帰に応じる『えさ』を見せつつ、2国間交渉への突破口を開こうとしているのではないか」と、日本側の関係者は分析する。

TPPを主導してきた日本は、麻生太郎副総理とペンス副大統領による経済対話という枠組みを作り、米国に不利な条件を飲まされる恐れがある2国間の貿易交渉を避けてきた。今回の会談でも「向こうから言われない限り、こちらから持ち出すことはないかもしれない」(日本政府関係者)と、経済を議題にすることには後ろ向きだった。

しかし、別の日本政府関係者は「米国は(昨年秋の)2回目の経済対話で、これは日本側の引き延ばし策だと気づいた」と話す。3回目の開催はめどが立っておらず、もはや安倍首相とトランプ大統領が経済問題を話し合わざるをえない状況だと指摘する。

<最悪のシナリオ>

 

日本側がとりわけ懸念するのが、米国が北朝鮮という安全保障問題で日本の要求を聞き入れるのと引き換えに、農業や自動車分野の市場開放や、2国間協議を迫ってくること。

安倍首相はトランプ大統領に対し、米国に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の破棄だけで北朝鮮と合意するのではなく、日本を射程に収める短・中距離弾も含めた全ての核・ミサイル開発の放棄を迫るよう念押したい考え。日本人拉致問題も米朝会談の議題にするよう伝える。

「では、経済問題ではこうしろ、とトランプ大統領が言ってくるのは目に見えている」と、日本側の関係者は言う。「最悪のシナリオは、2国間交渉に持ち込まれること。次に最悪なのは、(大規模金融緩和を続ける)日本のマクロ政策の是正を求めてくること。アベノミクスに影響する」と話す。

日本政府内では、まず米国が現在の条件のままTPPに参加し、そこから新たな条件を追加していく2国間交渉に応じる案も検討されている。「結果として2国間FTA(自由貿易協定)と同じものができる。そういう道も探っている」と、関係者は明かす。「しかし、大統領の琴線に触れるか分からない」とも語る。

<複雑に絡む中ロとの関係>

安倍首相にとって、今回の首脳会談のタイミングも良くない。米国は通商や南シナ海問題をめぐり中国と、英国で起きた毒殺未遂事件やシリア問題をめぐりロシアと関係が悪化している。

同盟国である日本は、逆に中国と関係を改善、ロシアと経済協力を強めようとしており、米国の外交政策とズレが生じている。

訪米中にトランプ大統領とのゴルフが調整されており、野党議員の中からも「ラウンド中、貿易赤字、貿易赤字とささやかれ続けるのではないか。いっそのこと、今回の訪米は国会が認めないほうがいいのでは」との声が漏れる。

自民党の河井克行総裁外交特別補佐は「戦後のあらゆる外国首脳との会談の中で、今回の日米首脳会談が、最も重要なものになることは間違いない」と話す。

(久保信博、リンダ・シーグ、金子かおり 編集:田巻一彦)

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