消費税率10%への引き上げで協力要請=安倍首相・施政方針演説

[東京 28日 ロイター] – 安倍晋三首相は28日、衆参両院で施政方針演説を行い、少子高齢化に対応した安定財源確保のため10月に予定される消費増税について「国民の理解と協力」を呼び掛けた。

安倍政権の3大看板である1)デフレ脱却、2)拉致問題、3)憲法改正のうち、改憲に関して「憲法審査会で各党の議論が深められることを期待する」と述べ、1年前の「実現の時を迎えている」との表現からトーンダウンした。外交・安全保障の基軸は日米同盟としつつ、自主防衛の重要性を強調した。北朝鮮との国交正常化にも強い意志を示した。勤労統計の不適切調査については陳謝した。

財政運営を巡り「社会保障改革と同時に、その負担を次の世代へと先送りすることのないよう、2025年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化目標の実現に向け、財政健全化を進める」と述べた。このため「少子高齢化を克服し、全世代型社会保障制度を築き上げるために、消費税率の引き上げによる安定的な財源がどうしても必要。10月からの10%への引き上げについて、国民の皆様のご理解とご協力をお願いする」と述べた。同時に「8%への引き上げ時の反省の上に、経済運営に万全を期す」とも付け加えた。

国土強靭化に関して、「昨年、異次元の災害が相次いだ。もはや、これまでの経験や備えだけでは通用しない。命に関わる事態を『想定外』と片付けるわけにはいかない。7兆円を投じ、異次元の対策を講じる」とした。

憲法改正については「憲法は国の理想を語るもの。次の時代への道しるべ。私たちの子や孫の世代のために、日本をどのような国にしていくのか。大きな歴史の転換点にあって、この国の未来をしっかりと示していく。国会の憲法審査会の場において、各党の議論が深められることを期待する」と述べた。夏の参院選を控えており、与党公明党などに配慮した慎重な表現にしたとみられる。

デフレ脱却との関連では「失われた20年。その最大の敵は、日本中にまん延したデフレマインドだった」と指摘した上で、「デフレマインドが払拭されようとしている今、未来へのイノベーションを大胆に後押ししていく」と語った。

相次ぐ統計の不適切処理に対して野党は攻勢を強めているが、「勤労統計について、長年にわたり、不適切な調査が行われてきたことは、セーフティネットへの信頼を損なうものであり、国民の皆様にお詫び申し上げる」と陳謝。「基幹統計について緊急に点検を行ったが、引き続き、再発防止に全力を尽くすとともに、統計の信頼回復に向け、徹底した検証を行っていく」とした。

北朝鮮に対しては「核、ミサイル、そして最も重要な拉致問題の解決に向けて、相互不信の殻を破り、次は私自身が金正恩委員長と直接向き合い、あらゆるチャンスを逃すことなく、果断に行動する」と述べ、「北朝鮮との不幸な過去を清算し、国交正常化を目指す。そのために、米国や韓国をはじめ国際社会と緊密に連携していく」と強調した。

外交・安全保障について「基軸は日米同盟」としつつ、「自らの手で自らを守る気概なき国を、誰も守ってくれるはずがない。安全保障政策の根幹は、わが国自身の努力に他ならない」と指摘。「国民の命と平和な暮らしを、わが国自身の主体的・自主的な努力によって守り抜いていく。新しい防衛大綱の下、そのための体制を抜本的に強化し、自らが果たし得る役割を拡大する」と自主防衛力強化の姿勢を強調した。

通商問題に関し、「自由貿易が、今、大きな岐路に立っている」と表現し、「急速な変化に対する不安や不満が、時に保護主義への誘惑を生み出し、国と国の間に鋭い対立を生み出している」と指摘。「今こそ、私たちは、自由貿易の旗を高く掲げなければならない。こうした時代だからこそ、自由で、公正な経済圏を世界へと広げていくことが、わが国の使命」と語った。

日米通商交渉については「昨年9月の共同声明にのっとって、米国との交渉を進める」と述べた。「広大な経済圏を生み出す東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が、野心的な協定となるよう、大詰めの交渉をリードしていく」と表明した。

日中関係は「昨年秋の訪中によって、完全に正常な軌道へと戻った」と胸を張った。対ロシアでは「ロシアと国民同士、互いの信頼と勇往を深め、領土問題を解決して、平和条約を締結する。戦後70年以上残されてきたこの課題について、次の世代に先送りすることなく、必ずや終止符を打つとの強い意志を、プーチン大統領と共有した。首脳間の深い信頼関係の上に、1956年宣言を基礎として交渉を加速していく」と原則を述べた。

日本が議長国を務め、6月大阪で開催される20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は「世界経済の持続的成長、自由で公正な貿易システムの発展、持続可能な開発目標、地球規模課題への新たな挑戦など、世界が直面するさまざまな課題について率直に議論を行い、これから世界が向かうべき未来像をしっかりと見定めていく。そうしたサミットにしたい」との考えを表明した。

(竹本能文※)

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