EU商業会議所、中国の「社会信用システム」に警鐘

[北京 28日 ロイター] – 在中国の欧州連合(EU)商業会議所は28日、中国が導入を表明して物議を醸している「社会信用システム」について、企業に対する導入が進んでおり、加速していると警告、同システムのリスクに注目するよう海外政府に呼びかけた。

社会信用システムは、企業や個人をスコアリングする世界でも前例のない制度。海外では、共産党による社会・経済の支配が一段と強まるのではないかとの懸念が浮上している。

中国政府が2014年に打ち出したロードマップによると、債務の返済履歴、個人の行動、企業の不正行為など様々な情報をハイテクを駆使して記録し、個人・企業を優遇・処罰する。2020年までに導入する計画としている。

一部の専門家は、システムの導入は始まったばかりで、詐欺や食品の安全といった社会問題への対応に役立つと指摘しているが、EU商業会議所の報告書作成に関わったコンサルティング会社シノリティクスのビヨルン・コンラッド最高経営責任者(CEO)は、政治的な目標に合わせて企業を動かす「手術器具」になる恐れがあると指摘。

「目指す方向に企業を規制・管理・誘導する極めて強力なツールになる。(企業は)合法か違法かという判断ではなく、善悪の判断で動くことを迫られる」と述べた。

EU商業会議所の報告書によると、中国政府は外資出資制限など従来の制約の緩和を約束する一方で、企業の行動を管理する体制を強化。社会信用システムも、こうした市場アクセスの制限を巡る「大きな変化」の一環という。

EU商業会議所によると、中国は約30種類の基準に基づいてすべての企業を評価する計画。納税実績、環境保護、製品の品質、データ転送、価格設定、免許、規制順守などビジネスのほぼすべての側面が考慮される。約30種類の基準の多くはすでに導入されているという。

今後導入される罰則規定では、評価が低い企業に罰則が適用される可能性がある。罰則には、比較的少額の金銭の支払い、補助金・税還付の適用対象からの除外、ブラックリストへの掲載などが含まれる可能性があるという。

コンラッドCEOは「法律上、中国企業の代表となれば、社会信用システムの個人の評価と会社の評価が直結することになる」と述べた。

報告書によると、企業が取引先や提携先の実績に基づいて評価され、優遇・処罰される可能性もある。

報告書は「偏った」評価が行われない保証はないと指摘。外国企業が中国政府の命令と自国の規制の間で板挟みになる恐れがあるとしている。

EU商業会議所のヨルグ・ブトケ会長によると、中国政府が現在力を入れているのは自国市場での施行で、国際市場で企業の行動を方向づけることはまだ重視していないとみられる。

ただ同会長は「西側諸国の政府は絶対に目を向ける必要がある。経済協力開発機構(OECD)諸国の政府は、この問題を中国と協議すべきだ」としている。

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