米ワッツアップがイスラエルNSOを提訴、世界的なハッキング巡り

[ワシントン/サンフランシスコ 29日 ロイター] – 米フェイスブック(FB)<FB.O>傘下の対話アプリ大手ワッツアップは29日、世界20カ国で同社の利用者約1400人の携帯電話をハッキングして情報を収集する政府の活動を手助けしたとして、イスラエルのサイバー技術会社NSOグループを提訴した。

ワッツアップによると、同社のビデオ通話システムを通じて複数の利用者の携帯電話にマルウエア(悪意のあるプログラム)が遠隔で送り込まれたという。政府情報機関を含むNSOの顧客はマルウエアを通じて端末の所有者を秘密裏に監視下に置いた。標的には外交官や反体制派の政治家、ジャーナリスト、政府高官が含まれたという。

訴訟は米サンフランシスコの連邦地裁に提起された。ワッツアップは同社やフェイスブックのサービスにNSOがアクセスするのを禁ずるよう裁判所に求めるとともに、損害賠償金も請求している。訴状ではハッキングを実施した国としてメキシコ、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンの名前のみが挙がっている。

ワッツアップは文書で、100人の一般市民が標的になったと指摘し、「紛れもない権限乱用」とした。

NSOは文書で「この訴えに最も強い言葉で反論し、今後、徹底的に争う」と表明。「NSOの唯一の事業目的は、テロや重大な犯罪に対抗するのに力を貸すため、政府情報機関や法執行機関に技術を提供することだ」と強調した。

ワッツアップの月間利用者は約15億人に上っており、第三者が盗聴できないよう利用者のメッセージを暗号化するなど、秘密保持レベルの高さを売りにしてきた。

今回のハッキングに関する調査でワッツアップに協力したトロント大学の研究機関シチズンラボはロイターに対し、標的となった人たちには著名なテレビタレントやネット上で多数の嫌がらせに遭っていた有名な女性、「暗殺の企てや暴力の脅し」に直面していた人物が含まれていたと明らかにした。

シチズンラボとワッツアップはともに、標的となった人たちの名前は明らかにしていない。

NSOが提供する、携帯電話のハッキングを可能にするスパイウエアを巡っては、中南米や中東でさまざまな人権侵害問題が取り沙汰されてきた。約1年前にトルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館内でサウジ人著名ジャーナリストのジャマル・カショギ氏が殺害された事件でも、NSOのスパイウエアが何らかの役割を果たしたとの疑いが持たれている。

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