アングル:日本の新型ウイルス対策、影響試算しづらく応急措置に

竹本能文

[東京 13日 ロイター] – 政府が13日にまとめる新型コロナウイルス対策は、当面の資金繰り支援が中心の応急措置になる見通しだ。中国経済の存在感が格段に増し、日本の観光・製造業への影響が試算しづらいためで、当面は2019年度予算の予備費を使っての逐次対応となる。早ければ3月にも第2弾を打ち出す。

政府は13日午後に開く「政府対策本部」会議で当面の緊急対策を公表する。資金繰り支援のため、日本政策金融公庫などに5000億円の緊急貸付・保証枠を設置するほか、検査体制を拡充、風評被害の防止策などを打ち出す。

あくまで観光客急減の影響を受けるような観光・中小企業向けの資金繰り支援といった応急措置で、財政措置は予備費で賄える範囲内にとどまる見通しだ。

「影響のあるすべての業界に対して完全な対策を打ち出すのは難しく、逐次的に打ち出していくしかない」と、政府関係者は話す。別の政府・与党関係者は、「国内での感染拡大の有無などを見極め、来月などに第2弾を打ち出す可能性がある」と語る。

2002─03年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が中国発で流行した際は、内閣府が月例経済報告で日本経済への影響を試算した。しかし、今の中国は世界経済における存在感が当時に比べて格段に大きく、訪日観光客も10倍と急増しており、政府は影響を測りかねているようすだ。

自動車産業を始め、中国は日本企業の部品や素材の供給網(サプライチェーン)に組み込まれている。「それらが国内で代替可能なのかどうかで影響が異なり、現時点で試算は難しい」(内閣府)という。

西村康稔経済再生相は10日の会見で、「今時点で何か試算するより、まずは感染拡大を防いでいく段階」と語った。

現時点で、新型ウイルス対策に伴う追加の財政措置が検討されているようすはない。財務省主計局によると、19年度予算の予備費5000億円のうち、未使用分が2866億円あり、20年度も5000億円の予備費を計上する予定。「20年度本予算の増額修正は不要だろう」(与党幹部)との見方が多い。

しかし、終息までにどのくらいの時間がかかりそうか、どのくらいの規模まで感染が拡大しそうか、今は誰もが測りかねている状況だ。政府は毎月の月例経済報告で、「景気が緩やかに回復している」との文言を死守しているが、影響が長期化すれば難しい判断を迫られそうだ。

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(編集:久保信博※)

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