10月6日、来日した米ポンペオ国務長官と挨拶を交わす菅義偉首相(GettyImages)

ファイブ・アイズ、日本とNZでメンバー交代を=豪学者が提案

オーストラリアの著名な社会学者でシドニー大学の准教授でもあるサルバトーレ・バボネス (Salvatore Babones)氏は9月29日、自身のブログおよびオピニオンサイト「1945」への寄稿文で、中国と戦う能力を向上させるためにはニュージーランドを除外し、日本を参加させるべきだと書いた。

米国主導の欧米民主諸国による中国共産党(以下、中共)の包囲網には、米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドからなる機密情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」が中心的な力となっている。

ファイブ・アイズは、中共による南シナ海での攻撃的な軍事姿勢や南太平洋地域での拡張行動、そしてパンデミック下での戦略的物資の中国への過度な依存に懸念を共有している。

米国の対中包囲網に全面協力する日本は信頼できる同盟国

バボネス氏は、日本がファイブ・アイズに参加すれば「メリットが大きい」とし、 「ハイテク大国の日本の米国支持は不動なもの。将来、日本政府が中国からの貿易優待などの『甘い誘惑』に負けて西側同盟を裏切る可能性は非常に低い」と分析した。

河野太郎前防衛相は8月、日本経済新聞とのインタビューで、価値観を共有するファイブ・アイズとの連携拡大に意欲を示した。

東シナ海と南シナ海、中印国境、そして香港の現状を一方的な力で現状で変えようとする中国に対抗するため、「ファイブ・アイズからニュージーランドを外して日本を加入」させることだとバボネス氏は提案した。

同氏はファイブ・アイズからシックス・アイズに増やすことに否定的だ。「同盟によるネットワークが膨張すれば安全性の低下は免れない。信頼の低下、さらには同盟の有用性までもが低下する」との見解を示した。

また、ニュージーランドの安全保障部門はファイブ・アイズへの忠誠を示しているものの、同国の政治中枢の間で長年にわたり支持を得られていないという。「外部のものは知ることができないが、ニュージーランドが多数の情報を提供しているとは考えにくい。情報消費者であるニュージーランドをファイブ・アイズに留めることは、同国の安保部門の自尊心を高める以外にほとんど何の役にも立たない」とバボネス氏は厳しく指摘した。

「安全保障は冷酷なゲームであり、諜報はその中で最も冷酷な部門だ」とし、国内の協力も得られておらず、消極的なニュージーランドは離脱させるべきではないかと提案する。「ほとんどの同盟国はニュージーランドより日本を選ぶだろう」と同氏は付け加えた。

一帯一路に加わるニュージーランド

中国共産党が主導する広域経済圏構想「一帯一路」に加わるニュージーランドは、その同盟国の利益を危険にさらす可能性がある。

ニュージーランドと中国は9月23日に、「第30回中国・ニュージーランド合同経済貿易委員会」をテレビ会議形式で開催した。中国商務省の高峰報道官は翌日、両国は引き続き「一帯一路の枠組みの中で、インフラ、農業、観光、製薬・ワクチン研究開発などの分野において協力していく」と述べた。

ニュージーランドと中国は締結していた自由貿易協定(FTA)のアップグレード合意を2019年11月に発表している。同協定は世論調査段階にあり、最終的にはニュージーランド政府の承認が必要だ。

2017年、ニュージーランドの前政権は、「18カ月以内に一帯一路計画に参加する」との合意覚書(MOA)に署名したが、前政権が選挙で敗北し同計画は延期された。

ジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardern)現ニュージーランド首相は、2019年4月のスピーチで、自身が中国公式訪問中に李克強首相と「一帯一路」計画について話し合ったと語っている。

また、同国のデビット・パーカー(David Parker)貿易・輸出振興大臣も、19年4月に北京で開催された「一帯一路フォーラム」に出席し、会議後「一帯一路フォーラムが中国とニュージーランドにさらなる機会を提供する」と語った。

米はファイブ・アイズ同盟国に警告「一帯一路に参加しないで」

5月24日、マイク・ポンペオ米国務長官は豪スカイニュースのインタビューで、米国は「一帯一路構想に署名した国を含む、国益を危険にさらすパートナーとは関係を断つ」と警告した。

ポンペオ氏は、ファイブ・アイズ同盟国に対し、「一帯一路」協定についての注意を促した。

同氏は「中国は、一帯一路計画を実施するために、通常優遇金利の融資や債務書類上の条件などを提示する。いったん中共に妥協してしまえば、それこそ現地の人々や国家を本当のリスクの中にさらすことになる。中共が他の場所で害を及ぼす力に貢献していることになる」と警告した。

9月29日、ニュージーランド外務貿易省は、大紀元の取材に対して、中国の一帯一路に関する取材に応じた。同省は国際貿易と環境に関して、一帯一路によりニュージーランドにどのような利益をもたらすかについて協議を継続していることを明らかにした。

2020年6月7日、オーストラリアのビクトリア州のさまざまな民族および市民団体が、メルボルン中心部の国会議事堂の前で一帯一路に抗議する集会を開催した。

(大紀元日本語ウェブ)

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