【掌編小説】月と遊ぶ 李白「月下独酌」より
長安の市街から西へ、春の野道をどれほど進んできたか。
「今夜は、よい月が出るな」。そう思い立ったときは頭上にあった太陽だが、気に入った酒肴の用意やら何やらで時間をとられ、今はすでに大きく西へ傾いている。旧知の友には「今宵は白(はく)を探すなよ」と、わざわざ自分が独酌を楽しむから今夜は邪魔するなと予め伝えておいた。そんなところが、妙に念が入っている。
あきらかに奇人の部類に入るが、友人にはなぜか疎まれない。そこがこの人物がもつ底知れぬ魅力らしく、「ならばこれを飲め」と李白が日頃から好んでいた酒の一樽を送ってくる友人もいた。
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