≪医山夜話≫ (28-1)

病と性格(1)

マーサは頭が良くて、健康かつエネルギッシュですが、勝気なところがあります。いかなる難題でも、彼女を困らせることはできないようでした。いつ何をすべきかは、すべて彼女のコントロール下に置かれ、子供を作る時でさえ、願いどおりに女の子と男の子を一人ずつ生みました。神様は彼女に特別な愛情があるようで、彼女自身もそう思っていました。

 ところが一週間前、マーサは末期がんであり、片側の乳房を切除手術するようにとの診断書が病院から届きました。彼女はまだ42歳です。

 ここ数年間、マーサはよく風邪や腹痛などで私の診療所を訪ねました。ここでは彼女は何も飾らず、本当の自分を出せるため、今日も私に相談に来たのでした。突然の悲劇に、彼女の精神は混乱していました。

 「診断書を見てから、家族の中で唯一プレッシャーに耐えられる姉にまず情況を伝えました。姉には母親に実情を伝えて、気持ちを落ち着かせて私に電話するよう何度も頼みました」

 「母はイタリア人で、非常に感情豊かだということを、先生もご存知でしょう。母もそのような一人で、突然のショックに母はきっと泣きやまず、隣近所の人たちまで悲しみの渦に巻き込まれると思います」

「主人は良い人で、子供たちにとっても優しい父親です。唯一の弱点は、衝撃にとても弱いところなのです。彼の感情は完全に私に影響されて、私が喜ぶ時は彼も楽しくなり、私が憂鬱な時は彼も悲しくなります。彼は、私がガンに侵されたと知ったらきっと倒れてしまいますので、逆に私が彼を慰めて面倒をみなければなりません」

 マーサは極度の悲しみに落ち込んでいました。ガンと宣告されてから一週間しか経っていませんが、これからの一家の生活はどうなるのだろうと、私も心配になりました。
 
もし病気に罹ったのがマーサ以外の誰かだったら、彼女はきっと冷静に対処して、正しい判断を下せます。しかし今は、この最も強い人が病気に罹り、家族の助けを必要としているのです。

「マーサさん、あなたのガンの由来は何だと思いますか?」

「化学の手段で作られた食品、汚染された水や空気、プラスチック製品、食肉の中の抗生物質やホルモンなどが原因だと思います。私は近代科学と工業汚染による正真正銘の犠牲者です……」マーサは込み上げる怒りを抑えられないようでした。

 「では、親からの遺伝や、自分の良くない生活習慣とは関係ありませんか? まったく同じ環境に置かれた人の中で、ガンに侵される人と侵されない人がいるのは何故でしょうか?」
 
彼女は沈黙しました。

 「マーサさん、ガン患者を対象にして心理研究を行った科学者が、一つ面白い現象を発見しました。調査によると、ガン患者には共通点があります。他人の過ちを許さない、命の終りまで自分が傷つけられたことを忘れない、物を集めて保存するのが好きでなかなか手放さない……」

マーサは目を大きく開いて、「昨日、私は大昔に起こったことで、主人と喧嘩しました」と言いました。
 
「先生の言われた三つの共通点を自分はすべて持っています。長い間、他人の過ちを許すことができず、これらの心のしこりはだんだん病にまで発展しました」

「こんなに多くの問題は、化学療法では治せないものですね」とマーサはやっと自分の問題点に気づき、納得しました。

では、どのように治療したらいいのでしょうか?
 

(翻訳編集・陳櫻華)