≪医山夜話≫ (32-1)

スーザンのアフリカへの旅

栄養学の研究をしているスーザンは薬草の知識が豊富で、よく世界各地へ講演に出かけます。スーザンは旅行が好きで、毎回ユニークなお土産を持ち帰ってはみんなにプレゼントしていました。

 今回、スーザンはアフリカへ行くと言いました。私はスーザンに、「衣類を多く持っていくんですよ。できるだけアフリカ現地で服を洗わないようにね」と、助言しました。

 アフリカから帰って数日後のある日、彼女は突然、「先生は皮膚病の研究をされたことがありますか?」と尋ねてきました。

 「どんな種類の皮膚病ですか? 蚊に刺されたくらいですか?」

 彼女の腰部には二、三ヵ所、一円玉ほどの大きさをした水ぶくれがあり、赤くなっていました。

 「これは蚊に刺されたあとですか、あるいは私たちの知らない他の虫に噛まれたのでしょうか?」と私は彼女に聞きました。

 「今回、アフリカでの宿泊先は、わりと清潔なところでしたが、私は不安でした。蚊は見えませんでしたが、突然水ぶくれが数個も出てきて、しかも次第に大きくなったと思ったら、硬くなりました。これは寄生虫に刺された病状にとても似ています」

 私にはこんな経験がなく、アフリカにも行ったことがありません。本で読んだ知識しかないので、「私にも分かりません」と答えました。

 「皮膚の下でずっと虫がうごめいているように感じる」とスーザンが訴えますが、彼女の症状を、私以外のどの医者も信じません。医者たちはみな、虫に刺された後、彼女は過敏になっているので、鎮静剤の量を多くするべきという意見を持っていました。

 「医者たちはアフリカに行ったことがないので、現地の状況を想像も出来ないし、知識も持っていません……」と、スーザンは不満そうに言いました。

 スーザンの言うとおりです。彼女が尋ねた医者たちは、みな大学を卒業したての人ばかりです。かごの中で暮らす鳥と同じく経験不足で、一度も遠い旅に出たことがありません。何か問題に出くわしたら、事典と資料の中に答えを探しだそうとします。それでも解決できなければ、患者を別のところへ紹介する以外は方法がありません。

 それから三日後の朝でした。私が診療所に着くと、スーザンが駆けよって来ました。きっと、またあの虫と関係があるのだと私は思いました。聞いてみると、今朝、医者がもう一度彼女の水ぶくれを診たと言うのです。その時、意外にも破れた皮膚の下から、一匹の寄生虫が頭を伸ばしている光景が見えました。引っ張り出すと、その寄生虫の長さは四、五センチもありました。その医者は、恐怖で全身冷や汗をかきました。「スーザン、早く! 急いで寄生虫研究所に行って、この虫の正体を突き止めましょう! 何という虫だろう? 人間の体に生息するなんて……」

 スーザンは抑えきれずに叫びました。「私はここ数日というもの、毎日、皮膚の下を虫が這っているとあなたたちに訴えてきましたが、誰もが信じてくれませんでした! 本当に『世の中で最も治療し難いのは医者の耳』という言葉どおりです。誰も私の話を聞いてくれませんでした……。今、私にどんな研究所を探せというのですか?」

 医者は本をめくり、やっと寄生虫研究所を見つけました。スーザンは寄生虫を防腐剤に浸した小瓶を持ち、走って行きました。

 「スーザンが見たのはただ一ヶ所の水ぶくれに過ぎず、まだ二カ所あるのに……」と私は思いました。

 数時間後、スーザンは帰って来て、「これはアフリカでよく見られる寄生虫である」という専門家の意見をみんなに伝えました。 

 旅行した時、現地はとても暑かったので、彼女が泊まった旅館では洗濯機で洗ったシーツを海岸の砂浜に広げて干していました。太陽の高温に当てた綿製品は一見とてもきれいになったと思われますが、実は寄生虫が多くの卵をシーツに産みつけていたのです。人の体がシーツに接触したら、破れた卵は人体に入って皮膚の下で成長します。普通、十五日間もしたら人体から出て成虫になって飛んでいき、また繁殖する。そのように繰り返します。地元のアフリカ人は慣れていて気にしませんが、外国人にとってはまさに「脳ミソが飛び出すほど」恐ろしいことです。

 その後スーザンは薬を飲み、体内の寄生虫をすべて排出しました。間もなくして彼女はこの怖い体験を忘れました。日を経て、彼女はフィジーに行きましたが、そこでもスーザンは痛ましい出来事に遭遇してしまったのです!

 スーザンの身に何が起こったのでしょうか? また次回、読者の皆様にご紹介しましょう。
 

(翻訳編集・陳櫻華)