【医学古今】

夏の水毒症に注意

  一般的に、特に高齢者は夏の脱水症を心配しますが、水毒症にはあまり注意を払わないようです。

 脱水症予防のために水を飲むよう心掛けますが、冷たい飲料水を多く摂っています。すると、一部の人は食欲の低下、ほてり、異常発汗、だるさ、めまい、頭痛などの症状を訴えます。しかし、病院で検査しても原因が分からないこともあります。

 漢方医学による診察の場合、腹診すると心窩部が冷たく、振水音があり、舌がやや大きく、脈が緊、ツボを触診して水分(すいぶん)、陰陵泉(いんりょうせん)、三陰交(さんいんこう)、上廉(じょうれん)、下廉(げれん)などに圧痛があれば、ほぼ水毒症であると判断できます。したがって、以上のツボに鍼灸を施せば、症状は改善に向かう場合が多いのです。

 なぜ水毒症になるのでしょうか?

 漢方医学の理論では、水は胃に入ると、体内の陽気によって、温化、吸収、気化の過程を経て、はじめて津液になって潤いの作用を発揮できるようになります。陽気が弱い人は、水を温化、吸収、気化しにくいので、冷たい水を過剰に摂取すれば、水の代謝障害が起こり、代謝しきれない水が臓器内に停滞して、水毒の症状が起こります。

 そこで陽気が弱く、普段冷えやすい体質の人は、できるだけ温かい水を摂るようにした方がよいでしょう。

 

(漢方医師・甄 立学)