金属を含む星が高速で銀河系を飛び出したことを発見

ある研究で、地球から約2000光年離れた場所に、時速200万マイル近い速さで銀河系から飛び出している奇妙な星を発見しました。 金属を大量に含み、太陽のように大部分が水素やヘリウムの普通の星とは大きく異なります。 一体どのようにして形成されたのでしょうか?

ハッブル望遠鏡と Transiting Exoplanet Survey Satellite (TESS) が収集したデータを基に、コードネーム「LP 40-365」と呼ばれるこの星が、銀河系から高速で飛び出しているだけでなく、急速に回転していることを発見しました。 表面の明るさのパターンから、9時間に1回の割合で自転していると推定されています。 ちなみに太陽の自転は約27日に1回です。

分析の結果、LP 40-365はもう一つ、金属の含有量が多い特徴があることがわかっています。 主任研究者の一人であるボストン大学天文学助教授のJJ・ヘルメス氏は、「LP 40-365は、これまでに科学者が発見した星の中で、最も金属含有量が豊富な星の一つである」と述べました。 太陽のような星はヘリウムと水素が豊富で、超新星爆発を起こした星のみが金属元素を多く含みます。

「大量の金属元素は、星の爆発などの激しい核反応の副産物であると我々は考えています。」とヘルメス氏は言いました。

これらの特徴を組み合わせた研究の結果、この星は超新星爆発現象の後に放出され、まだ完全に爆発していない星であることが示唆されました。 これは、近年になってようやく科学者によって発見された新しいタイプの珍しい星です。

この研究の著者の一人であるボストン大学卒のオデリア・プッターマン氏は語っています。「不完全な超新星爆発を生き延びたというのは、かなりユニークなことです。我々がこのような星が存在する可能性を考え始めたのは、近年のことです。 この星は爆発の中で放出されたものと思われますが、観測結果から、回転しながら飛び出していることがわかりました」

爆発後に放出された破片であれば、LP 40-365の回転がはるかに速いことを説明できますが、別の疑問が生じます。もしLP 40-365が親星から放出された主要な破片の一つであれば、更に速く回転していたはずです。

研究者たちは、爆発の際に放出された元の星の割合が大きいほど、放出された破片の回転速度が速くなると考えています。9時間の回転速度は遅いとされていることから、この破片は、親星から放出された破片の中でも、より小さな部分であるはずです。

結果、この星が連星系の一部であると研究者たちは推測しました。つまり、この星ともう一つの星が比較的近くにあって、お互いの重心を中心に公転しているということです。 この2つの星はどちらも白色矮星の可能性があります。白色矮星が近くにあると、片方の星が伴星から物質を吸い続け、ある質量に達すると、白色矮星が爆発する、つまり超新星現象が起こります。

超新星爆発の発生は比較的まれであるため、研究者はこれらの連星系が爆発する前の状況を見ることはできません。 爆発が起こる頃には、爆発の残骸が伴星を吸い込んだ星から来たものなのか、それとも吸い込まれた伴星から来たものなのかを見分けることは困難です。

今回の研究では、LP 40-365の自転が比較的遅いことが、もともとの連星系で爆発した星が伴星を吸い込んだ小さな破片であることを示す手がかりになったことを示唆しています。

(訳・神谷一真)