ビタミンCがもつ「4つの利点」と1つの注意点

ビタミンCは、よく知られた抗酸化物質です。
体内に摂取される十分な量のビタミンCは、風邪症状の軽減、心臓血管の保護、糖尿病のコントロール、白内障リスクの軽減に役立つなど多くの利点があることを、エール大学の生物化学博士で、抗酸化物質研究の先駆者であるレスター・パッカー氏は述べています。

ただし「ビタミンCをサプリメントで補うには注意すべき点がある」と同氏は言います。以下、パッカー氏のお話です。
 

ビタミンCの利点その1:風邪への対策

ビタミンCは化粧品売り場でも有名ですが、主な効能は、病気に対抗する抗酸化物によるものです。

私が思うには、ライナス・ポーリング博士(米国人化学者、ノーベル化学賞受賞者)が「一般的な風邪にはビタミンCが良い」と提唱してから、多くの人がビタミンCをウイルス対策の「魔法の薬」だと思うようになったようです。

以来、風邪の症状が出始めた初期から、皆が高用量のビタミンCサプリメントを飲むようになりました。そうすれば「風邪は消える」と信じているからです。

しかし、ほとんどの場合そうではありません。いくつかの研究では、ビタミンCは風邪を予防したり治療したりすることはできないとされています。

ただし、風邪症状の期間を短縮、あるいは症状を軽減することができます。そのため、ビタミンCを飲むことによって、風邪の不快な症状から比較的早く抜け出すことができます。

風邪の諸症状に対するビタミンCの効果はよく言及されていますが、なぜ風邪の回復を早めるのか、あるいは、風邪以外の感染症の回復も早められるのかについては、まだ明らかになってはいません。

「ビタミンCは抗生物質に似ている」「抗ウイルス、抗菌性がある」などと言われてきましたが、私たちがビタミンCについて認知している限り、このような言い方は単純すぎると思います。

ビタミンCは特定の微生物を死滅させる薬のようなものではなく、おそらく抗酸化物質ネットワークの役割、特に免疫系の機能から、主に感染と闘う力を持っていると信じています。
ビタミンCが体内に入ると、免疫細胞に次々と捕捉されます。実際、免疫細胞内のビタミンC濃度は血液中の濃度より20倍から100倍高くなっています。

そこで免疫細胞は、ウイルス、真菌、細菌などの望ましくない侵入者を攻撃するために多数のフリーラジカルを産生します。
ところが、フリーラジカルをつくりすぎると免疫細胞が破壊され、実際には免疫系が弱ってしまいます。ビタミンC群はこれらの細胞の中に集まり、フリーラジカルの攻撃から細胞を保護しているのです。

抗酸化物質ネットワークでは、ビタミンCはビタミンEを再生でき、免疫力を増強させています。これはどういうことかというと、まずビタミンEがフリーラジカルを消失させることにより、自らがビタミンEラジカルとなってフリーラジカルによる脂質の連鎖的酸化を阻止します。
そこで発生したビタミンEラジカルは、ビタミンCなどの抗酸化物質のはたらきによってビタミンEに再生されるのです。

ビタミンCはビタミンEを再生することにより、間接的に免疫系を刺激し、病原との戦いを促進するのです。
一部の研究では、ライノウイルス(および細胞培養で類似したその他のウイルス)などについて、ビタミンCがウイルスの複製を阻害することが示されています。

また他の研究では、ビタミンCを摂取している学童では、それを摂取していない学童よりも気管支炎、扁桃腺炎、およびその他の一般的な咽頭および肺疾患の発生が少ないことが報告されています。

これらの発見は、部分的に見ると、ビタミンCがウイルスキラーであることを肯定しているようです。しかし私の見るところでは、これは井戸の底から天を見るに変わりありません。物語の全貌は、もっと大きいはずです。
繰り返しますが、これは我々の新しい知識、すなわちビタミンCが酸化物に対抗することで、体内で果たす役割の多様性につながるものなのです。

体内に侵入したウイルスが発病するには、遺伝子が起動されなければなりません。遺伝子が起動しない間は、ウイルスはずっと眠っています。
抗酸化物がウイルスの誘発を阻止するかもしれないという興味深い報告がいくつかあります。私は、ビタミンCの役割の一部として、抗酸化という新たに発見された現象が相当すると信じています。

ビタミンCはまた、コラーゲンの成長を刺激して結合組織を強固にし、さらにウイルスの侵入を防いで、細胞がウイルスの攻撃に抵抗できるようにします。つまり、ビタミンCは細胞とウイルスの間に保護壁を築いて、ウイルスが侵入できないようにするのです。
 

ビタミンCの利点その2:心血管系の健康維持

少し前までは、ビタミンCの研究は感染を防ぐ機能に焦点を当てていました。その頃には、心血管系の健康を維持するという、より重要な別の機能を見つけることはできませんでした。これほど重要な機能が、他の機能の陰に隠されていたとは驚くべきことです。

ビタミンEが上昇することで、リポタンパク質が酸化から保護されます。リポタンパク質の酸化は、血管を硬くする一連のプロセスの最初のステップです。

リポタンパク質は脂肪および血球とともに血液中を移動します。リポタンパク質はフリーラジカルの攻撃を受けやすいのですが、フリーラジカルがリポタンパク質を攻撃する場合、ビタミンEがリポタンパク質を防御し、フリーラジカルを除去するのです。

しかし、そうすると同時に、ビタミンE自体もフリーラジカルになります。ビタミンEがフリーラジカルの状態を維持し続けると抗酸化物質から消失して、保護されたリポタンパク質が次のフリーラジカルに遭遇しても、もう防御能力がなくなっているのです。

先述のように、ビタミンCは、このビタミンEフリーラジカルをビタミンEに再生することができます。

ビタミンCは遭遇したすべてのフリーラジカルの戦力を消失させ、体の抗酸化効果を維持します。
ビタミンCサプリメントを服用すると、心臓病のリスクが低下します。UCLA公衆健康科学科が行った研究によると、1日300 mgのビタミンCを服用した男性の心臓病の割合は、服用が49 mg以下の男性より45%低かったといいます。

この研究で示された結果はかなり明確なようで、最低推奨用量のビタミンCだけでは、フリーラジカルに対して体がきちんと自己防衛するのに「十分な武器」を与えられないそうです。

血管内皮の機能不全が正常な血流を乱すことは、心臓病の前兆です。研究では20人の健康なボランティアに、高脂肪食、低脂肪食、およびビタミンC 1000 mgとビタミンE 800 IUを与えておき、その後高脂肪食を与えました。食事の後、研究者たちは超音波装置で動脈の血流を測定した。

高脂肪食を摂取しながら、サプリメントを摂取していない人は、食事から4時間以内に血流に悪影響を及ぼすことが分かっています。
一方、低脂肪食や高脂肪食でもビタミンサプリメントを摂取している人には、そのような悪影響は生じていません。

だからといって、毎回の食事の前にビタミンの錠剤を飲めば、高脂肪の食物を好きなだけ食べて良いという同意書になるわけではありません。

この研究で示されたビタミンの効果は高脂肪食に対するもので、長期的に同じ効果があるかどうかは不明です。脂肪の摂取に気をつけながら、抗酸化物質のサプリメントを服用することができれば、心臓病との戦いを続けるうえで一石二鳥になることでしょう。
 

ビタミンCの利点その3:糖尿病のコントロール

心臓病のリスクを大きく高める病気があります。それは糖尿病です。
ブドウ糖やアスコルビン酸(ビタミンC)は同じ管を介して細胞に吸収されるため、糖尿病に関わる深い意味を持っています。この場合、ビタミンCはブドウ糖と競合して細胞に入る機会を得ようとしますが、勝利するのはブドウ糖です。

これは当然、細胞にビタミンCが不足し、細胞が酸化ストレスを受けやすくなることを意味しており、最悪の場合心臓病にもつながります。
ビタミンCやその他の抗酸化物質のサプリメントを服用したり、抗酸化物質が豊富に含まれている食品を多く食べたりするなどしてください。

糖尿病は臓器が砂糖水に浸かっているようなもので、合併症がひどくなると死に至ることもあります。糖尿病患者はビタミンCを十分に補給することで、病気をコントロールし、心臓病のリスクを減らすことができます。
 

ビタミンCの利点その4:白内障のリスクを低下させる

ビタミンCが白内障のリスクを低下させることは、ますます多くのエビデンスにより裏付けられています。たとえ最も懐疑的な臨床医であっても、抗酸化物が視力を保護するという認識に妥協せざるを得なくなっています。

ある研究機関が10年以上前から、抗酸化物が本当に白内障のリスクを軽減できるかどうか調査してきました。
研究対象は56歳から71歳までの介護健康研究所の職員で、1980年代の前半からビタミンCのサプリメントを飲んでいる人もいれば、そうでない人もいます。

ビタミンCサプリメントを服用している165名と、服用していない136名について眼科検査を行ったところ、誰も白内障を患っていませんでしたが、そのうち188人が白内障につながる早期の徴候が見られました。

これらの検査を通じて、サプリメントでビタミンCを摂っていない人は、摂っている人よりも白内障になりやすいことが判りました。実際、白内障の徴候があった人の60%は、ビタミンCサプリメントを飲んでいない人でした。

ビタミンCを摂取していない女性に比較すると、ビタミンCを10年以上服用している女性は23%しか白内障になる傾向がありません。

ビタミンCサプリメントを服用していない女性が食事から摂取するビタミンCの量は、1日の推奨量の約2倍である約130㎎ですが、これは私から見れば、まだ十分でないことをご理解ください。

私は、毎日単純にビタミンCのサプリメントを飲むだけで、心臓病の保護と対処、免疫システム機能の強化、白内障の予防、さらには皮膚の老化を遅らせることに大きな差をもたらすことができると信じています。

ビタミンシCが本当に一般的な風邪の治療にならなくても、今日ではビタミンCを飲むに値する十分な理由がたくさんあります。

ただし、最後に1点だけ、ご注意いただきたいことがあります。
服用するビタミンCサプリメントは、ぜひ「最高品質のビタミンC」を選んでください。

ビタミンCサプリメントは、アスコルビン酸ビタミンC とビタミンCエステルと呼ばれるアスコルビン酸鉱物塩の2つの形態で販売されています。

どちらも形態は良いのですが、アスコルビン酸ビタミンCは胃酸の分泌を促し、胃の不調の改善だけでなく、食物の鉄分の吸収を高めてくれます。

鉄分不足の人には良いことなのですが、鉄分の過剰な摂取は心臓病を引き起こすリスクにもつながります。通常は、鉄分の過剰摂取を避けるためサプリメントの品質にも関心を持っていただくことをお薦めします。
(文・レスターパッカー/翻訳編集・鳥飼聡)