心優しいウクライナの人々(Shutterstock)

私の思い出のキエフ「温もりと風格の街」(2)

(前稿から続く)

3 先に水を汲みなさい

これから自分が日々を過ごす学校の寮に行ってみると、キエフ市内の住民が外に出て、容器で水を汲んでいるのを見ました。

チェルノブイリ原発事故の影響がまだ残っていて、水道水の水源地が汚染されているためだと言います。留学生が入る学生寮でも、台所の水道水を飲むことはできません。

キエフに着いたばかりのある日、屋外は寒かったのですが、私は薄着のまま走り、安全とされる水汲み場まで水を取りに行きました。

その場所は寮から近いので、往復でも数分しかかかりません。私は若いので、薄着でも大丈夫だろうと思って、飛び出したのです。ところがその日は、水汲みに並んでいる人が多く、長い列の後ろについた私は、たちまち寒さに震えました。

すると、1人のお婆さんが私に気づきました。列の前の人に声をかけて、寒さに震えている留学生の私が先に水を汲めるようにしてくれたのです。列の前にいた全員が同意してくれたおかげで、私はすぐに水を汲んで部屋に戻ることができました。

4 金銭以外の思考もある

私がキエフの街の店へ買い物に行くと、ウクライナ人の店員はよく、こちらが聞いてもいないのに、この卵や牛乳はいつ入荷したものかを教えてくれます。

その後で「これはもう新鮮ではない。他のものを買いなさい」と、わざわざ勧めてくれるのです。

中国人は(もちろん私も含めてですが)海外に行ったばかりの頃は、それまで本国で「全ての思考が金銭に向く」という教育をさんざん受けてきたため、ものの考え方がそのまま拝金主義で化石化しているのが普通です。

私も当初は、心の中でよくつぶやいていました。「ウクライナ人はなんて愚かなのだろう。なぜ、お金を儲けられないのか」と。

ところが、キエフで始まった私の新たな日常生活は(まことに穏やかな思想改革によって)私の頭にこびりついた「全ての思考が金銭に向く」という価値観を、次々と覆していくのです。「お金ばかりではない。相手への思いやりという考え方があるのだ」と。

(次稿に続く)

(翻訳編集・鳥飼聡)

 

関連記事
中国古典舞踊には、基本的な技法、身体を通しての表現と姿勢、跳躍、反転、スピン、その他の難しい空中回転の技術をマ […]
弓は弾射する武器としては最古もので、中国の弓は四千年以上前に生み出された とされています。
古代の中国兵は、軍務の信号を長距離に送るために、狼煙(のろし)を上げました。狼煙台は通常、たどり着き難い場所に戦略的に設けられました。
中国医学は漢方とも呼ばれており、中国文明とともに数千年の歴史を歩んできました。「気」や「陰陽五行」などの神秘的な概念や人体と宇宙の対応関係、西洋医学とは全く異なる治療法の数々は、今も人々を魅了しています。中医学の根底となるのは、『黄帝内経』と呼ばれる書物です。
長年にわたってオランダ・ドレンテ州には50以上の巨石群が点在しており、一番重いものでは25トンもあります。オランダでは、この巨石は「巨人」によって運ばれ、積み上げられたと信じられています。しかし、山もなく岩もないオランダのどこから、この巨石が運ばれてきたのでしょうか?そして、誰がこのように築き上げたのでしょうか?