『レ・ミゼラブル』――フランス文学の最高峰(二)

ミリエル司教に助けられたことで、人間不信だったジャン・ヴァルジャンは、更生して心優しく、寛大な心で人と接し、そして、司教の慈悲を社会の至る所に届けていくことを決心しました。

ヴァルジャンは名前を変えて、誰も自分のことを知らない町で新たな人生を歩み始めました。そこでは、誰に対しても優しく接し、人助けを惜しまなかったので、7、8年後には市長に選ばれました。

ある日、ジャン・ヴァルジャンは馬車の下敷きになっている労働者を助けました。その時、ヴァルジャンが服役していた刑務所の刑務官だったジャヴェールに、自分がヴァルジャンではないかと疑われました。しかし確固たる証拠がなかったため、ジャヴェールはヴァルジャンを逮捕することができませんでした。

ある日、ジャヴェールが突然ヴァルジャンの前に姿を現し、これまで市長を犯罪者だと疑っていたことを謝り、本当のヴァルジャンを逮捕したことを告げました。

この時、自分がずっと疑われていたことを知ったヴァルジャンは驚愕し、同時に重要な決断に迫られていたのです。過去を完全に断ち切るか、あるいは、自分がヴァルジャンであることを認め、無罪の人間を救うか。このまま黙っていれば、平和な生活が戻り、今後、過去のことに悩まされることもなくなるでしょう。

しかし、ヴァルジャンは内心では罪のない人間が自分の代わりに刑務所に入れられることを許せなかったのです。もし、相手を助ければ、自分は市長としての名誉も財産も、穏やかな生活も失うことになります。

葛藤の末、ヴァルジャンは相手の男を救うことを優先し、裁判所で自分が本当のジャン・ヴァルジャンであると認めました。終身刑の判決を言い渡され、彼は5度目の脱獄をしました。

牢獄から脱出した後、以前、助けたファンティーヌという女性に、その1人娘のコゼットを救うことを約束したので、ヴァルジャンは1823年のクリスマス・イヴの夜、モンフェルメイユにやって来ました。そこで虐待されて、働かされている8歳のコゼットと出会いました。

大金を払ってコゼットの身元を引き受けたジャン・ヴァルジャンはコゼットを実の娘のようにかわいがり、そして、コゼットもヴァルジャンを父親として慕うようになりました。

(つづく)

(翻訳編集・天野秀)

江宇応