【名画鑑賞】「イエス・キリストの降誕」絵画集(下)

フランスの画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(Georges de la Tour、1593-1652)はイタリアの画家カラヴァッジオの影響を受けて、背景を暗くし、主要人物に光を当てるというはっきりした明暗の対比で、主要な部分を目立たせる画風になっています。1644年の「羊飼いの礼拝」は、現在ルーヴル美術館に収蔵されています。カラヴァッジオの影響を受けてラ・トゥールのほとんどの作品は厳粛な雰囲気が漂っていますが、静寂で神秘的な雰囲気はラ・トゥール独自の画風です。

 

「羊飼いの礼拝」(1689年、シャルル・ル・ブラン:パブリックドメイン)

 

ルイ14世の第一画家としてヴェルサイユ宮殿、ルーヴル宮殿等の内装を担当したシャルル・ル・ブラン(Charles Le Brun、1619-1690)は、絵画と装飾の巨匠であるだけでなく、王立絵画彫刻アカデミーの院長であり、ゴブラン工場の設立運営にも携わりました。彼のこの「羊飼いの礼拝」からも分かるように、ル・ブランの絵画技法は確かに優れており、17世紀フランス工芸・美術界に強い影響を与えたという評価に違わぬものです。

この作品からは古典的な優雅さはもちろん、その構図と色使いから、にぎやかさも感じられます。光は聖母マリアと幼子イエス、そして、右上の天使たちに集中しており、主要なものと副次的なものがしっかりと区別されています。

 

「イノセンス」(ウィリアム・アドルフ・ブグロー:パブリックドメイン)

 

アカデミズム絵画を代表するフランスの画家ウィリアム・アドルフ・ブグロー(William Adolphe Bouguereau、1825-1905)は1世紀近く名を忘れ去られたものの、20世紀末の頃、彼の甘く柔らかい雰囲気を醸し出している独特な画法と優れた技法が再び注目されるようになりました。

ブグローは女性や子どもを描くことを得意とし、女性の美と子どもの天真爛漫さと純粋さを見事に表現しています。この「清純」の中で、聖母マリアはぐっすり眠っている幼子イエスと子羊を抱えており、未来のイエスの犠牲を示しています。マリアの顔はわずかに下を向き、我が子を見守っていながらも、かすかに憂鬱な表情を浮かべて、何かを考えこんでいるように見えます。これは他の聖母子のテーマでもよく見られる内在的な要素ーー幼子イエスの降誕はその死とかたく結び付いていることを示しているのです。

今日では、クリスマスは世界共通の大イベントとなり、たとえ信者でなくても、この日に休暇を取って家族や恋人と過ごしたりプレゼントを贈ったりなど、イベントとして祝い、「イエス・キリストの降誕」の意義を深く追究したりはしないでしょう。もちろん、宗教的観点でなくとも、芸術家たちが神聖な宗教物語を表現する際に抱く善と美を追求する敬虔さを感じ、また、これらの作品がもたらす心の浄化を感じることができるでしょう。
(完)

(翻訳編集・天野秀)

周怡秀