【名画鑑賞】「アテナイの学堂」:偉大な哲学者たちへの敬意(上)

想像力に富み、若くしてミケランジェロレオナルド・ダ・ヴィンチと肩を並べる活躍を見せた「ルネサンス期の三巨匠」の1人であるラファエロ・サンティ(Raffaello Santi、1483-1520)が描いた「アテナイの学堂」は、西洋美術史上最も重要で、最も魅力的な巨作のひとつです。ローマ教皇、ユリウス2世により、ラファエロはヴァチカン宮殿の部屋に壁画を創作することとなりました。それが後に「ラファエロの間」と呼ばれている場所です。

 

「聖体の論議」(1508-1509、ラファエロ作:パブリックドメイン)

 

ラファエロが最初に着手したのは「署名の間」です。この部屋には「聖体の論議」があり、この絵をきっかけにラファエロの名は広く知れ渡るようになりました。この部屋はユリウス2世の書庫でもあり、もともとは使徒座署名院最高裁判所が設置されていました。

この知識と公正、平等、裁決を意味する部屋をどのように飾り付けるのか、何をテーマにするのか、構図をどうするのかなど、いくつもの重要な決定が今後、この神聖な土地で暮らす人々に大きな影響を与えることとなるので、慎重に考えなければなりません。

ラファエロ自身も、今回の依頼以上に重要なことはないと十分に理解していました。約500cm×700cmという巨大な壁画は、まだ20代の若いラファエロにとって、大きなチャレンジとなりました。当時の伝統では、図書館や書庫などのような場所を飾るのは思想家や哲学者の肖像が一般的でした。しかし、この若き画家はこの構図を更なる高い次元に押し上げたのです。

 

ヴァチカン宮殿、署名の間。(Shutterstock)

 

時代の思潮を形に

ルネサンスは、古代ギリシアや古代ローマの哲学、芸術、宗教、文化などを復興しようとする文化運動です。ラファエロの超人的な才能は、絵画を復興させたといっても過言ではないでしょう。

「署名の間」に描かれた壁画は、主に西洋哲学の核心ーー精神の世界に着目している哲学者と物質の世界に着目している哲学者の異なる理論をテーマとしています。

ラファエロは壁画を通じて、西洋の文明を開き、そして、西洋文明を築き上げてきた偉大な思想家や哲学者たちが理性的な弁論を通じて真理を得たのだということを、我々に伝えているのです。

「アテナイの学堂」はルネサンス期の精神をそのまま表現し出した偉大な作品です。若いラファエロはこの後世に大きな影響を及ぼす依頼を見事に完成させ、そして、多くの人から好評を得たのです。
(つづく)

(翻訳編集・天野秀)