中国の街では今年も、クリスマスの雰囲気が見られる。北京や上海のショッピングモールでは、ツリーやイルミネーションが並び、写真を撮る人の姿もある。見た目だけを見れば、年末の恒例行事のようだ。
ところが今年も、「サンタ」は警察に捕まった。
上海では12月24日、サンタクロースの衣装を着た女性が、通行人にリンゴを配っていたところ、警察に止められ、派出所へ連れて行かれた。
女性の説明によると、派出所に入ってまず驚いたのは、その光景だったという。自分と同じような理由で連れて来られたサンタクロース姿の人たちが何人もおり、警察署内はサンタでごった返していた。事情聴取を待つその様子に、そこはどこか場違いな雰囲気に包まれていた。
一人ずつ呼ばれ、なぜ街中で配り物をしていたのか、誰の許可を得ていたのかといった点について説明を求められたとされる。詳しいやり取りは明らかにされていないが、無許可での街頭活動について厳重な注意を受けたという。
事情聴取と注意の末、女性はその日のうちに解放された。ただ、「もう少し長引いていたら、クリスマスを拘置所で過ごすところだった」と振り返っている。
(今年も捕まったサンタ。2025年クリスマス、上海)
こうしたケースは、今年が初めてではない。中国ではここ数年、クリスマスに関する個人の行為が、当局の判断で注意や取り締まりの対象になる例が断続的に見られてきた。クリスマスが「宗教的」「西洋的な行事」と受け取られやすいことも背景にある。過去には、学校や商店に対し、飾り付けや行事を控えるよう求める通知が出たこともあった。
今年は景気の冷え込みもあり、商業施設でのクリスマス装飾は事実上、容認されている。ただし、個人が公共の場で自由に盛り上げる行為は、今でも線引きの外に出やすい。
ツリーはOK。でもサンタは要注意。
祝っているようで、完全には祝えない。それが、いまの中国のクリスマスである。
(北京の商業施設。クリスマスイベントは開催、BGMは革命歌。当局ににらまれないよう気を使う必死さがにじむ中国のクリスマス)
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