董宇紅博士から皆さんへ「糖は免疫系にとって最も危険な食物です」(4)

(前稿より続く)

多糖が招く「老化促進物質」

糖分の過剰摂取が主な原因で、虫歯や肥満糖尿病といった健康上の弊害があることは以前から知られています。

それに加えて、糖分を多く摂ることで血糖値が上昇すると、体内の各細胞が糖分の多い環境にさらされることになります。そこで生じるのが、終末糖化産物であるAGEs(エージス)という物質です。

AGEsは、酸化ストレスや炎症反応を増加させ、老化を促進します。
さらには糖尿病、アテローム性動脈硬化症、慢性腎不全、骨粗鬆症、各種がん、アルツハイマー型認知症などを悪化させると言われています。

もともと人の正常な代謝はAGEsを産生するのですが、加齢にともないAGEsを除去する能力が低下してしまうのです。そうして増えたAGEsが、さらに老化を促すという悪循環が起こり得ます。

終末糖化産物はヒトの老化を促進します。(健康1+1/大紀元)

焼肉やステーキなどの料理は、おいしそうな独特の香りがあり、人の食欲をかき立てるものです。

しかし、肉を直火やフライパンで焼く、あるいは油で揚げるなどの高温調理によってタンパク質のグリコシル化(メイラード反応)が起きると、AGEsが10~100倍に増えることが知られています。

 

お薦めは「焼かない料理」

AGEsをできるだけ出さないようにするには、どうしたらいいでしょうか。
調理では「蒸す」「茹でる」「電子レンジで加熱する」などの方法が良いとされています。

さらには、「調理時間を短縮する」「低温で調理する」「レモン汁や酢などの酸味成分を入れる」など調理上の工夫も有効とされています。

これらの調理法はAGEsをかなり減らしてくれますので、ぜひお試しください。
そう言えば、レストランで出されたステーキの側にレモンが置かれているのも、一理あることと言えるでしょう。

また赤い肉(牛肉・豚肉)は、白い肉(鶏肉・海鮮)よりAGEsが多いので、動物性タンパクを得るための食材は、なるべく後者を選択したほうが良いかもしれません。

さらに、ご自分の体のことを考えるならば、肉を調理する場合、直火やフライパンで焼くのではなく、シチューのような煮込み料理にすることでAGEsの量を抑制するようにしてください。

直火焼きやフライパンで焼いた牛肉は、終末糖化産物を多く含んでいます。(健康1+1/大紀元)

 

「どの程度」まで許容されるか?

砂糖をはじめとする人工糖や遊離糖はできるだけ控えるべきですが、一切食べないというのは極端すぎて現実的ではありません。

では、毎日摂取する砂糖などは、どのくらいの量に抑えたらいいでしょうか。

2015年、世界保健機関(WHO)は新版の飲食指針を発表しました。
それによると「遊離糖の量を、毎日の摂取カロリーの5%以下にする」、つまり目安として約25g(ティースプーン6杯)以下に減らすことを提案しています。

その上で、日常の食生活において私たちが注意すべきことを4点、お話ししましょう。

第1に、食品を購入する際には「食品包装の栄養表示をよく読む」ことです。
第2に、家に買い置きしてある食品について「糖分の種類と含有量を把握する」ことです。

第3に、これまであまり意識せず食べていた「加工食品を少なくする」ことです。
そして第4に、大量の人工糖が添加されていることで、おいしく作られたお菓子やスイーツではなく、素材そのままの「おいしくない食品」に目を向けることです。

これはもちろん、まずいもの食べるという意味では全くなく、加工度の低い食品や自然食品のなかに「本当のおいしさ」を見出すということです。例えば、新鮮な野菜や果物、豆類、ナッツ類、精製されていない炭水化物などが、それに相当します。

要は、砂糖を完全に断つのではなく、許容される程度をわきまえることで糖分摂取のリスクを避けられるということです。

 

紅楼夢』の茶のように味わう

いわゆる「生活習慣病」になる人は、健康を維持するために食べるのではなく、食べたいという強い欲求を満たすために食べている人が多いものです。

豪クイーンズランド工科大学(QUT)の研究者も、糖分の過剰摂取が、コカインのような麻薬と同じように、脳内のドーパミンのレベルを上昇させることを発見しました。

したがって、「砂糖中毒」を脱する方法は、麻薬を段階的に遠ざける方法と似ていて、毎回の食事のなかで少しずつ自制し、それを継続することに尽きます。

これは誰でも実行可能なことです。しかし、一度でも欲望に負けてしまうと、次回からはもっと自制が難しくなることは覚えておかなければなりません。

清代の小説『紅楼夢』のなかに、お茶を味わう場面があります。

主人公の賈宝玉と、ヒロインの林黛玉と薛宝釵の3人に、草庵で修行する尼の妙玉が心づくしの高級茶をふるまいます。

そこで妙玉は3人に対して、「1杯目は、お茶を楽しむため。2杯目は喉の渇きを潤す。3杯目からはロバが水を飲むのと同じ」と述べて、少量のお茶を深く味わって飲むことの大切さを説きます。

現代の私たちは、何を食べるにしても、『紅楼夢』の妙玉尼のように「少量のお茶を味わう気持ち」でいれば、健康を害するような欲望は出ないかもしれません。

(翻訳編集・鳥飼聡)

エポックタイムズのシニアメディカルコラムニスト。中国の北京大学で感染症を専攻し、医学博士と感染症学の博士号を取得。2010年から2017年まで、スイスの製薬大手ノバルティスファーマで上級医科学専門家および医薬品安全性監視のトップを務めた。その間4度の企業賞を受賞している。ウイルス学、免疫学、腫瘍学、神経学、眼科学での前臨床研究の経験を持ち、感染症や内科での臨床経験を持つ。