「キリストの嘆き」(ペーター・シュトゥーデル:パブリックドメイン)

伝統的芸術が語る美とは何か (中)

神聖な伝統

「神の彫刻を礼拝して、信仰を堅持し、深めていくことは、現存している伝統的な行いであり、他の多くの信仰や宗教にも通ずるものである」カンザスシティのネルソン・アトキンス美術館のヨーロッパ芸術のアナリストであるエイミー・マーティノー・デガランさんはこのように述べました。

(敬虔な宗教美術作品の画像はこちらから)

宗教美術を通じて、昔の芸術家たちは文字が読めない人々にも有効に真理を伝えました。1300年頃の作品から、芸術家たちが伝えたい、あるいは込められた感情や気持ちが感じ取れるようになりました。作品に感動した鑑賞者たちは、もしかすると、深い悟りを得て、さらに神に近づくことができたのかもしれません。

信仰者たちは像が持つ濃厚な宗教的意味を通して聖者への敬意を表し、そして、自らの悲哀や快楽を像に託します。

この15世紀の木製の像は、誰が創作したのかは不明です。もしかすると、何も持っていない両手が却って彼女の身分を暗示してるのかもしれないといいます。なぜなら、聖カタリナは常に本を持っており、聖バルバラは常に剣や聖杯を持っているなど、他の聖者や神は自らの正体や身分を示す何かを身に着けているため、このように何も持っていない像は非常に珍しいからです。

彫刻家ペーター・シュトゥーデルの「無原罪の聖母像」(Immaculate Conception)は、鑑賞者の心に衝撃を与える大理石の彫像です。この彫像の前に立つと、思わず真剣な気持ちになり、聖母マリアに敬意を示したくなるでしょう。厳粛な彫像はキリスト教徒が信じているものを表しているのですーー神がマリアを創造した時、マリアが原罪に汚されぬようご加護を与えたのです。

何かに驚いて思わず息を止め、手を胸に当てるシュトゥーデルの聖母マリアの姿は非常に自然です。そして、この彫像全体が特別なことを物語っているのです。マリアは球体の上に立ち、リンゴを咥えた蛇を踏んでいます。この蛇は私たちに、人は生まれた瞬間から犯罪(何か悪いことをしようという欲望)に誘惑されていることを警告しています。しかし、マリアは美徳をもって、純粋な信仰心は罪悪を打ち破ることができることを証明しているのです。彼女の足元のキューピットは彼女の降臨を祝っています。

この彫像の解説によると、1600年以前から、芸術家たちはキリスト教の核心的な概念を代表するものをすでに決めたのです。例えば、無原罪の聖母像を創作する時、胸に両手をあて、敬意に満ちた姿や、両手を組んで祈祷している時の姿が最も用いられています。

また、聖母マリアの足の下の丸いものは太陽、三日月型のものは月を表しています。聖母マリアは太陽を着て、足の下に月を踏むとキリスト教徒に信じられているのです。

(つづく)

(翻訳編集・天野秀)

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