台湾海巡署は2019年10月24日、中国砂上ポンプ船「豊溢9969号」と海砂運送船「長興36号」を拿捕した(海巡署が提供)

台湾海域での海砂採取は「中国のグレーゾーン侵略作戦」=米専門家

米国の専門家はこのほど、中国が台湾の海域で違法に海砂採取している行為について「狡猾である」と批判し、「中国が貴重な海洋資源を盗み、台湾に嫌がらせをするという目的を果たしただけではなく、台湾政府が財政的・軍事的資源を海上保安に費やすことを余儀なくされた」との見解を示した。

米国家安全保障専門家、エリザベス・ブロー(Elisabeth Braw)氏は11日、米誌「フォーリン・ポリシー」での寄稿で、中国の違法な砂採取は台湾周辺海域の汚染を悪化させた上、台湾政府に大きな負担をかけたとの認識を示した。この行動は中国側の「グレーゾーン侵略作戦(gray zone aggression)」の一部だと同氏は指摘。

グレーゾーン侵略作戦は、明確な軍事攻撃でない手法で他国などに被害を与えることを意味する。

近年、中国の海砂採取船が台湾の馬祖列島付近に大挙して押しかけている。その対応に追われた台湾側は海上巡視船12隻を投入し、「約4億ドル(約548億円)の費用がかかった」という。

高層ビルが次々と建設されている中国の都市では、建設資材の1種である海砂が「不足している」。

国際連合環境計画(UNEP)の専門家によると、中国が過去4年間に使った海砂の量は、米国が過去1世紀に使った量を超えた。専門家らは過度な海砂採取による台湾海域における海洋資源の枯渇を危惧している。

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環境ジャーナリストのヴィンス・ベイザー氏は9月6日、ワシントンで開かれた環境フォーラムで、地球環境と生態を支える土砂が、危機的な状況に直面していると述べた。同氏は特に、中国の工業が事態を深刻化させていると指摘した。
10月25日早朝、台湾・馬祖南竿(ばそなんかん)沖の海域に、中国の大型海砂採取船が大量に出現し、同島を囲んだという。台湾の沿岸警備隊馬祖巡視船チームが現場に到着し、一部の中国船は排他的経済水域の外へ退去した。