「脳の霧」がでる原因としては、コロナ後遺症のほかに、腸に問題が生じたことが考えられます。(Shutterstock)

コロナ後遺症「脳の霧」 治療のカギは腸の改善にある(1)

脳の霧(Brain Fog)」と呼ばれる症状があります。

コロナ後の脳にかかる「霧」

これは、記憶力、集中力、思考力のいずれもが一時的に低下することで、脳の中にまるで霧がかかったように「最近の記憶がはっきりしない」「言おうとした言葉が思い出せない」などの記憶障害が出る症状です。

「脳の霧」とは、新型コロナウイルス感染症がひとまず治癒した後に、この症状が出ることがあるため、とくに近年よく知られるようになった名称です。

「脳の霧」は病気ではなく一種の症状です。

こうした症状が出る原因としては、中共ウイルス(新型コロナウイルス)による脳への直接的なダメージのほかに、腸に何らかの問題が生じていることが考えられます。

「腸の不調」が脳に影響する

多くの神経が集中する腸は「もう1つの脳」とも呼ばれています。

臨床的によく見られる事例としては、脳の変性疾患の患者のなかで、発症する5年〜10年前の時点から、消化不良便秘を繰り返すなど胃腸に関係する症状を示していた人が多いことです。

もう1つの例は、多くの現代人を悩ませている過敏性腸症候群(IBS)です。

腹痛や下痢、便秘が繰り返される慢性疾患で、ストレス不安感などがその誘因と考えられますが、詳しい原因はよく分かっていません。

細菌やウイルスによる感染性の腸炎にかかった場合、その回復後に精神性のIBSになりやすいことも知られています。

それは、感染によって腸に炎症が起きることで腸壁の粘膜が弱くなるとともに、腸内細菌叢の状態が変化して、以前より腸が敏感になるためです。

さて、ストレスが腸に影響して過敏性腸炎になるのとは逆に、「腸に生じた問題が、脳に影響を与える」ということもあります。

米ジョンズ・ホプキンス大学神経胃腸病センターのジェイ・パスリチャ氏は、「腸に不調を抱える人は、うつ病や不安症になるリスクが高い。それは腸の神経が中枢神経系に影響して、感情を容易に変化させるからだ」と言います。

善玉菌の過剰摂取」は逆効果

その他の「脳の霧」の原因としては、腸内細菌による過剰なD乳酸の産生が考えられます。

2018年のある小規模な研究で、「脳の霧」および腹部膨満が見られた30人の患者を観察したところ、彼らは全てプロバイオティクスのサプリメントを服用していました。

プロバイオティクスは、善玉菌と呼ばれるカテゴリーに含まれます。通常であれば腸内細菌叢を良好な状態に保つ働きがありますが、サプリの大量服用によって過剰摂取すると、かえって弊害が生じるのです。

調査した30人のうち、19人に小腸内細菌の過度な増殖が見られ、また23人にD乳酸の過剰生産による一種の「中毒症状」が発生していたのです。

このD乳酸が、体内で過剰に産生されるとD乳酸脳症(D乳酸アシドーシス)を招き、意識の錯乱、運動失調、言語不明瞭などの神経症状が現れることがあります。この場合の「脳の霧」は、その症状の1つと言えます。

また、腸の問題だけでなく、胃がんを引き起こすヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)も、ビタミンB12の欠乏と関連して、「脳の霧」を引き起こす可能性があるとされています。

(次稿に続く)

(翻訳編集・鳥飼聡)

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