ニュート・ギングリッチ元下院議長 (Photo by Drew Angerer/Getty Images)

米ギングリッチ元下院議長、中国の軍事行動をけん制 有事になれば「たちまち孤立」

ナンシー・ペロシ米下院議長が今夜にも台湾訪問すると報じられるなか、25年前に下院議長として訪台したギングリッチ氏は米国メディアに出演し、中国共産党の軍事行動を強い言葉でけん制した。食糧問題を抱える中国は「強い立場にはない」とし、有事の際にはたちまち孤立するだろうと指摘した。

ペロシ氏の台湾訪問をめぐって、中国共産党の宣伝部門と軍部は強硬な姿勢を示している。中国共産党系の「環球時報」元編集長・胡錫進氏は、ペロシ氏の航空機は撃墜されるべきだと発言。空軍機や海軍艦艇も台湾周辺で活動を行った。

こうしたなか、ギングリッチ氏は米FOXニュースに出演し、ペロシ氏が搭乗する航空機を撃墜するような行動を中国軍がとるならば「文字通り戦争行為であり、大規模な報復以外に選択肢はない」とくぎを刺した。

最悪のケースとして航空機が撃墜される事態が発生すれば、米国は日本やオーストラリアなど同盟国と連携して報復攻撃を実施するほか、輸出入停止などの経済的打撃も与えるだろうと述べた。「我々はただちに中国を孤立させることができる」「都市では失業者が出始め、食糧不足にも陥るだろう。中国は我々をいじめられるような強い立場にはない」と強調した。

戦略家のエドワード・ルトワック氏は1日、中国は米国からの食糧輸入に依存している事実に言及した。自給自足で賄えるロシアとは異なり、中国は制裁に耐えることができないため、戦争を始めるという選択をしないだろうとの分析を示した。

米国家安全保障会議(NSC)のカービー報道官は1日、中国当局が敵対的な発言を強めていることを受け、ホワイトハウスや国防総省、国家安全保障のチームは状況を注視していると述べた。「議長には台湾を訪問する権利がある」と強調し、「長年にわたる米国の政策に沿った訪問を危機に発展させる理由は中国にはない」と一蹴した。

同氏はまた、江沢民政権下の1995年と1996年に中国共産党が台湾周辺海域で行ったミサイル演習に言及し、ペロシ氏が台湾訪問した際に同様の軍事行動が発生する可能性があると指摘した。「直接的な攻撃はしないだろうが、意図しない結果につながりかねない、誤算や混乱を招く恐れがある」。

中国共産党がペロシ氏の訪台に強く反発しているにもかかわらず、中国大手SNS微博(ウェイボー)では1日、「台湾」のワードが検索ランキング50位に入っていなかった。中国当局がネット検閲を行ったとみられており、専門家は、秋に党大会を控えるなか世論の過熱化を警戒したと指摘した。

中国外務省の華春瑩報道官は2日、予想されるペロシ米下院議長の台湾訪問について「米国と連絡を取り合っている」ことを明らかにした。

台湾の自由時報は、米下院議員団を率いるペロシ氏は現地時間2日午後9時20分(日本時間午後10時20分)、台北の松山空港に到着すると報じた。

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