9月20日、ニューヨークで開かれる国連総会に出席するため航空機に乗り込むバイデン米大統領(Photo by MANDEL NGAN/AFP via Getty Images)

バイデン米大統領、4度目の台湾防衛発言…「戦略的明白さ」で抑止狙う=専門家

米大統領に就任して以来4度目となる、米軍の台湾防衛関与に言及したバイデン氏。今回の発言は、中国共産党軍事演習などで猛反発したペロシ下院議長の訪台後初となる。専門家は、台湾有事の際の米軍関与をはっきりさせる「戦略的明白さ」を示すことで中国に対する抑止を狙っていると分析する。

バイデン大統領は18日に放映されたCBSの番組インタビューで、中国が侵攻した場合、米軍は台湾を防衛すると述べた。ロシアによるウクライナ侵略では米軍派遣はしないと言明したのと比べ、より硬派な対中姿勢を鮮明にした。

バイデン氏の発言を受けて、台湾外交部は「台湾に対する堅実な米国の安全保障のコミットメントを再び強調したバイデン大統領に心から感謝の意を表す」とコメントを発表した。

米国家安全保障会議のキャンベル・インド太平洋調整官は、バイデン大統領の台湾防衛に関する発言は「自明の理」だと強調。米国の台湾政策は「一貫しており変更はなく、継続していく」と、カーネギー国際平和基金での講演会で述べた。

4度も失言するだろうか

一部メディアはバイデン氏の「失言」と報じる。しかし、米セント・トーマス大学国際研究センターの葉耀元助教授は自身のFacebookで「はたして4度も『失言』するだろうか」と疑問符をつけた。

葉耀元氏は、台湾政策に変更はないが、バイデン氏があえて台湾有事の際の米軍関与という明白さを示すことで、活発化する中国の軍事行動に対する抑止効果をもたらすと分析する。

なぜ、米国はこれまで台湾有事に対する関与について明らかにしてこなかったのか。葉耀元氏は、米国が以前は中国共産党を脅威とみなしていなかったことや、中国経済への期待が背景にあったと推測する。

米国にとって台湾は戦略物資・半導体の主要サプライヤーであり、トランプ前政権に続きバイデン政権以降も上下院議員や州知事らの訪台が相次ぐ。葉耀元氏は「台湾有事を防ぐことは米国の国益にも関わる優先事項」と分析する。

葉耀元氏は、台湾を「支持」し「防衛」することを言明したバイデン氏の発言は、ペロシ氏の訪台よりも重要な価値があると指摘している。

米国は台湾政策の戦略的曖昧さに終止符を打つべきだとの意見は、ポンペオ前国務長官や共和党議員からも出ている。米国外でも、日本の安倍晋三元首相は4月、プロジェクトシンジケートへの寄稿文で曖昧政策について「北京には米国の決意を見くびらせ、台北に不安を抱かせることで、地域の不安定化を許している」と指摘。米国は台湾防衛関与をめぐり「誤解の余地はない声明を発出すべき」と訴えていた。

(翻訳編集・王天雨)

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