「紅包」という賄賂が横行する社会【現代中国キーワード】
【紅包】
多くの場合、赤い袋に入っているので「紅包(ホンバオ)」という。
正規の料金以外に、相手に「よろしく」で渡す金銭のことである。端的に言えば「賄賂」の語感に近いが、現代中国では慣習的なものなので、通常は違法とされない。
もともとは、日本の「お年玉」のように、お正月や節句のときに子供たちへ配られるお小遣いであった。中国だけでなく、香港や台湾など、中華圏には共通に見られる習慣である。
ただ、日本のお年玉と違うのは、親や祖父母など年長者に対してもこの「紅包」が贈られる。なかに入れる紙幣は、できるだけきれいな「ピン札」が好まれるが、最近では電子マネーでやりとりする「紅包」もあるというから、これは時代の変化と言うしかない。
職場でも、旧正月の休み中に出勤すれば、少額ではあるが「紅包」が出ることもある。いずれにしても、この範囲にとどまっていれば、悪い習慣ではない。
問題なのは、社会倫理に反する場面でも、この「紅包」が常態化していることである。
中国社会の全てに言えることだが、例えば、医療現場である病院や、教育の場である学校でも「紅包」が横行している。患者の家族や生徒の親から、医師や教師が平然と受け取るのだ。
医師にも教師にも、個人として誠実な人はいる。
ただし文革の時代に、これら知識分子の職業は「臭老九」と攻撃され、極端に冷遇された。その名残で、現在でも正規の給与は少ない。それが「紅包」の根深い温床となっている。
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