2020年6月17日、ドイツの食肉加工会社Toenniesに、食肉を宣伝する看板が掲げられている。参考写真 (Photo by SASCHA SCHUERMANN/AFP via Getty Images)

食肉や化石燃料など公共空間の広告禁止…気候変動で=オランダ西部都市

オランダでは環境保護や気候変動を取り入れた法整備が進む。アムステルダム西部ハーレム市では、食肉に関する広告を禁止する法令を採択し、2024年に施行する。このほか化石燃料やガソリン車、休暇用の航空便の広告も禁止する方針だ。

バス停留所や建物、スクリーンなど公共空間で食肉広告が禁止される。食肉関連業者や言論自由擁護団体などからは「行き過ぎた取り組み」などと反発を受けている。

国連食糧農業機関(FAO)は、温室効果ガス排出の14%以上を家畜が占めており、その一因は家畜のゲップやオナラから出るメタンガスであると指摘している。

環境団体は畜産や酪農に冷酷だ。農家により、二酸化炭素を吸収する森林が放牧のために伐採されているほか、飼料の栽培に使用される肥料は窒素が豊富なため、大気汚染や水質汚染、気候変動、オゾン層破壊に繋がっていると警告している。

畜産や酪農が主産業だったオランダだが、積極的な気候変動政策が取り入れられたことで同業種は萎縮している。6月、窒素排出基準の制定により酪農・畜産農家は生産規制を求められた。2030年までに国内農場の3分の1が閉鎖されるほどの大規模な規制とされる。

6月の政府発表は、オランダ内外の農家やトラック運転手などによる激しい抗議行動を引き起こした。同国では2019年にも、リベラル政党民主66(D66)のメンバーが環境政策として国内の家畜数を半減させることを提案し、畜産業者からは強い反発を招いた。

「自由経済への攻撃」

オランダの国会議員で政党ベラン・ファン・オランダのワイブレン・ファン・ハガ党首は、このハーレム市の食肉広告禁止令は「自由経済に根ざす企業に対する攻撃であり、経済的に悪影響をもたらす」と述べた。

食肉業界を代表する団体も、禁止令を行き過ぎた行為であるとして同様の懸念を表明した。

米国の農業業界向け出版物「WATTPoultry.com」は、ハーレム市の事例は米国内でも同様の広告禁止が行われる「前例となるだろう」と示唆した。

一方、多くの環境保護団体は規制を歓迎している。

「食肉・乳製品産業は、世界の温室効果ガス排出量の19パーセントを占めている。だからこれは気候にとって良いニュースだ」と、国際環境NGOグリーンピースUKはツイートした。

また、動物保護団体ユーログループ・フォー・アニマルズは、ツイッターで「これは食肉消費量の削減と、より持続可能な食糧システムの促進に向けた大きな一歩だ」とコメントした。

すべての環境保護主義者が反肉食主義者というわけではないが、中には動物の肉を見るだけで嫌悪感を抱く環境保護活動家も少なくない。

気候変動に関するサブスタック『ヒーティッド』の2021年の記事では、「肉投稿(ミートポスティング)」、つまり牛肉や豚肉、鶏肉、羊肉などの食肉用の肉写真をフェイスブックやインスタグラムなどのソーシャルメディアで共有するという行為を批判している。

彼らは「ミートポスティングは、地球にとって有害と考えられる産業を支えている」と主張している。

(翻訳編集・大室誠、佐渡道世)

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