2021年2月26日、フロリダ州で開催された保守政治行動会議(CPAC)で演説するジョシュ・ホーリー上院議員 (Joe Raedle/Getty Images)

米上院議員、ウクライナより台湾に支援優先を 中国の台湾侵攻に危機感

ジョシュ・ホーリー上院議員は6日、ブリンケン国務長官宛に書簡を送り、ロシアによる軍事侵攻を受けるウクライナへの支援よりも、中国からの軍事的威圧にさらされている台湾に武器を提供すべきだと主張した。もし中国の台湾侵攻が成功すれば、「米国の国家安全保障だけでなく、経済安全保障や行動の自由にも深刻な影響を与える」と危機感を示した。

現在、米国は「非対称兵器」に分類されるジャベリン対戦車兵器やスティンガー地対空ミサイルを優先的にウクライナに送っており、過去数年間で取り決めた台湾への武器売却の予定に大幅な遅れが生じている。米紙ウォールストリート・ジャーナルによれば、台湾に対する米国の兵器未納規模が一年前の140億ドルから187億ドルに膨れ上がっているという。

ホーリー氏は書簡の中で、ウクライナへの武器供与は「アジアでの戦争を防止する能力を阻害している」と指摘。米国の国益にとって「台湾はウクライナよりも重要」と強調した上で、台湾が自衛能力を維持するために必要な武器を迅速に提供すべきだと訴えた。

米国は、台湾有事の際の米軍の対応を明確にしない「あいまい戦略」を取っており、台湾の自衛力強化と支援が喫緊の課題として挙げられてきた。

台湾侵攻の時期について、予想より早まる可能性があるとする米高官などの発言が相次いでいる。米情報機関トップのヘインズ国家情報長官は5月、中国による台湾侵攻の脅威について「2030年までは危機的な状況にある」と発言。米インド太平洋軍のデービッドソン前司令官も台湾危機が2027年までに顕現する恐れがあると警告した。

ホーリー氏は米中経済安全保障検討委員会が先月発表した報告書を引用し、武器・弾薬の既存在庫のウクライナへの転用により「台湾への売却が承認されている武器の納入にかなりの遅れを生じさせ、台湾の即応性を損なわせている」と現状を訴えた。

こうした懸念事項を踏まえ、台湾に使用できる武器をウクライナに送ることは中国に対する抑止力を弱めるかどうかを質問し、16日までに回答するよう求めている。

ホーリー氏は、これまでも海洋進出を強める中国の脅威に焦点をあてる姿勢を取ってきた。フィンランドとスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)への加盟に反対する考えを表明したほか、400億ドルの対ウクライナ支援承認にも反対票を投じている。

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