2020年2月9日、台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入した中国軍機を監視するために、緊急発進する台湾国軍のF-16戦闘機(左)(台湾国防部)

台湾有事なら巨額損失…米議員、対中制裁など対応策定求める

米国のマルコ・ルビオ上院議員とクリス・スミス下院議員は15日、台湾有事の際に米国への経済的打撃を回避し、中国への制裁措置を計画する法案を提出した。中国が台湾を侵攻した場合、推計2兆5000億ドルの経済損失が生じるとされる。ルビオ氏は緊急時の対応計画を強化し「あらゆる手段を用意しておく必要がある」と強調した。

「台湾保護・国土回復法案」は、台湾侵攻時の米国の対応計画について、国防総省や商務省などの政府機関が議会に報告することを義務付ける。これには、中国共産党に対する制裁措置や中国による報復措置を回避する内容も含まれる。

ルビオ氏は、声明で台湾有事の脅威はますます高まっていると指摘。「米国の対応策を準備することは、国防と情報当局の最優先事項であるべき」「この差し迫った地政学的脅威に目をつぶることはできない」と述べた。

スミス氏も「明日の不測の事態に備えて今日の計画を立てなければならない」とした上で、法案は中国への抑止力にもなると強調した。

米国務省は中国が台湾を侵攻して封鎖した場合、年間で推計2兆5000億ドル(約356兆円)の経済損失が生じるとの調査結果を同盟国らと共有しているという。英フィナンシャル・タイムズが11月、報じている。

台湾侵攻の時期について、予想より早まる可能性があるとする米高官などの発言が相次いでいる。米海軍のギルディ作戦部長は10月、中国による台湾侵攻が2023年までに起きる可能性を排除できないと発言。米インド太平洋軍のデービッドソン前司令官も台湾危機が2027年までに顕現する恐れがあると警告した。

6日には、ジョシュ・ホーリー上院議員がブリンケン国務長官宛の書簡のなかで、ロシアによる軍事侵攻を受けるウクライナへの支援よりも、中国からの軍事的威圧にさらされている台湾に武器を提供すべきだと訴えた。

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