2022年9月6日、台湾南部の屏東県で行われた台湾軍の実弾演習の様子(Photo by SAM YEH/AFP via Getty Images)

台湾の兵役延長は一般的かつ必要

台湾の兵役義務期間の3倍増は、世界の他の国や地域(特に潜在的または現在進行中の紛争に直面している場所)での兵役義務化と一致するものだ。 世界49か国が、さまざまなレベルの兵役を義務付けているほか、 必要に応じて国民を召集する権限を有する国も存在する。

中国共産党の脅威とロシアのウクライナへの一方的な攻撃を教訓とし、台湾は2022年12月末に、2024年1月より2005年以降に生まれた男性の兵役義務期間を4か月から1年に延長することにした。 ガーディアン紙によると、台湾世論財団が12月に行った調査では、回答者の73.2%が兵役義務の延長を支持していることが明らかになった。

蔡英文総統は12月27日、「台湾は権威主義の拡張の最前線に立ち、民主主義の世界的防衛の前衛に立っている」とした上で、 「戦争に備えることによってのみ、戦争を回避することができる。戦う能力を持つことによってのみ、戦争を阻止することができる」と述べた。

台北のシンクタンク、国家政策基金の研究者であるチェ・チュン氏は、この兵役義務延長によって、自治領である台湾島の現在の軍隊16万5千人に、最終的に年間7万人が加わることになると述べたと、ロイター通信は報じている。 増派される部隊の多くは、正規軍が島への侵攻に迅速に対応できるよう、支援任務を担うことになる。

インド太平洋地域では兵役の義務化が一般的だ。 韓国では、男性は21か月から24か月の兵役が義務付けられており、 シンガポールでは、2年間の兵役の後、予備役として数年間勤務することが義務付けられている。 カンボジアとラオスは1年半、ベトナムは2〜3年の兵役が義務付けられている。

インドネシアには男性を対象とした選択的徴兵制度があるが、現在は適用されていない。 米国は男性を徴兵する権利を保持しているが、1973年以来実施はされていない。 インド太平洋地域では、オーストラリア、日本、太平洋島嶼国、フィリピン、ニュージーランドなどが、徴兵制や兵役を設けていない。

世界の他の国・地域では、軍隊での一定期間の現役勤務が義務付けられている。 例えば、イスラエルでは、若い男女の大半が2 ~ 3年の兵役を義務付けられている。 ロシアとその国境にあるベラルーシ、カザフスタン、モンゴルでは、さまざまな期間の兵役を義務付けている。

台湾はかつて、若い男性に1年間の兵役を義務付けていたが、 志願制への移行に伴い、2017年に義務兵役を1年から4か月に短縮した。

しかし、台湾では出生率が低下しているため、効果的な軍隊を編成することが困難になっている。 CNNが2022年12月中旬に報じたところによると、台湾の国家開発評議会は、2035年までに年間出生数が2021年の15万3820人より約2万人減少すると予測している。

台湾の国防安全研究院の蘇紫雲所長は、CNNの取材に対し、今後10年以内に、採用可能な若年層の数が3分の1に減少する可能性があると述べた。 蘇氏は、「これは我々にとって国家安全保障の問題だ」とし、 「(中国の)脅威が高まっている今、より多くの火力と人員を確保する必要がある」と語った。

台湾の徴集兵の月給は約27,700円(210米ドル)から約87,100円(660米ドル)に引き上げられ、ジャベリン対戦車ミサイル、スティンガー地対空ミサイル、ドローンなどウクライナがロシアに対して使用する武器の追加訓練を受ける予定だと、ワシントンポスト紙が報じている。

中国共産党は台湾を自国領土であると主張し、これまで中国の領土であったことのないこの島を強制的に併合すると脅している。 中国政府が独立派と見なす蔡総統が2016年に選出されて以降、中国共産党は好戦的な姿勢を強めている。 2022年8月にナンシー・ペロシ下院議長(当時)を含む米国議会代表団が台北を訪問した後、中国共産党は軍艦や軍用機を島周辺に配備して訓練を行うなど、より攻撃的な姿勢を見せている。

米国が台湾への軍事融資と援助を許可したことに対する明らかな反応として、中国人民解放軍の戦闘機71機が12月25日に台湾の防空識別圏に侵入した後、蔡総統は義務兵役の延長を発表したとラジオ・フリー・アジアは報じた。

台湾の呉釗燮外相はガーディアン紙に対し、2020年以降、中国人民解放軍の戦闘機による島の防衛区域への侵入が5倍に増えるなど、軍事的脅威が「これまで以上に深刻になっている」と述べている。

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