2020年8月7日、アイフォンに表示されるティックトックのアプリ (Drew Angerer/Getty Images)

TikTokに個人情報データを収集できる「バックドア」=内部告発者

米国では中国動画投稿アプリ「ティックトック(TikTok)」による中国政府への情報漏えいに対する警戒が超党派で強まっている。こうしたなか、米国のジョシュ・ホーリー上院議員は8日、同アプリに関する新たな内部告発の申し立てについて徹底的な検証を行うようジャネット・イエレン財務長官に求めた。

ホーリー氏はイエレン氏に宛てた書簡の中で、内部告発者から直接得たTikTokのリスクについて言及した。TikTokと北京拠点の運営会社バイトダンスが主張する「米国ユーザーデータの厳格な管理とアクセス制限」は「表面的でまったく存在しない」に等しいと述べた。

内部告発者によれば、TikTokとバイトダンスの従業員は「Dorado(ドラド)」と呼ばれる独自ツールで簡単に中国から米国のデータに切り替えることができるという。

加えて米国のデータにアクセスすることができる「Aeolus(アイオロス)」ツールは管理者とデータセット所有者の承認があれば使用可能だと述べた。内部告発者はホーリー氏に「中国にいるエンジニアが中国以外のデータに切り替え、データをバックアップし、集計や分析するのを直接見た」と証言している。

内部告発者は、TikTokとバイトダンスの緊密な連携にも触れ、両社は「中国で設計した独自のソフトウェアに依存している。それにより外国の監視を避け、中国人エンジニアがソフトウェアのバックドアを組み込めるようにしている」と述べた。

強まる疑惑

ホーリー氏はこうした疑惑は、米国で TikTokを禁止すべき理由の一つになっていると主張する。「TikTokは、中国共産党が米国のデータにアクセスすることはないと何度も主張しているが、その可能性はますます高くなっている」

書簡ではイエレン氏に対してTikTokのソフトウェアツール、データセット設備、または内部製品の情報を対米外国投資委員会(CFIUS)に提出するよう求めた。

2022年3月21日、米国のジョシュ・ホーリー上院議員 (Drew Angerer/Getty Images)

いっぽう、TikTokの広報担当はエポックタイムズの取材で「言及されたツールは分析ツールで、データへの直接アクセスを許可するものではない」「米国のユーザーデータへのすべてのアクセスは米国内で管理されている」と内部告発者の主張を否定した。

議会での動き

安全保障上のリスクが取り沙汰されるTikTokをめぐり、米国では法整備が進む。米連邦議会下院の外交委員会は1日、同アプリの米国内での一般利用を禁じる法案を可決した。

法案を発表したマイケル・マッコール委員長は「TikTokを端末にダウンロードしている人は、中国共産党にすべての個人情報へのバックドアを与えたことになる。携帯電話にスパイ気球を入れるようなものだ」と大紀元の姉妹メディア新唐人に語った。

昨年末にバイデン大統領が署名した226兆円の歳出法にも、政府所有端末でTikTok利用禁止が盛り込まれているほか、米国の半数以上の州でも同様の動きを見せている。

さらに8日に行われた上院情報特別委員会の公聴会では、米連邦捜査局(FBI)のレイ長官がTikTokについて「中国政府の管理下にあるツールであり、米国の安全保障上の懸念だ」と指摘した。

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