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米TikTok訴訟で内部映像公開 アルゴリズムの中毒性に社員が懸念

2025/08/23
更新: 2025/08/23

米ノースカロライナ州で進行中のTikTokに対する訴訟で、同社内部の会議映像が公開され、波紋を呼んでいる。この映像には、現職および元社員がTikTokのアルゴリズムが青少年の心身に悪影響を及ぼす可能性を懸念する発言が収められており、TikTokが「若者にとって安全なプラットフォーム」と主張してきた公式見解と矛盾する内容となっている。

CNNが8月21日に報じたところによると、ノースカロライナ州のジョシュ・スタイン前司法長官は昨年、複数の州と共同でTikTokを提訴。訴状では、TikTokが未成年者の中毒性を意図的に高める設計を行い、利用者や保護者に安全性を誤認させる「不公平かつ欺瞞的な商業行為」をしていると非難している。

内部の懸念を映す声

8月19日、同州高等裁判所のアダム・コンラッド判事は、TikTokが求めた訴状と映像の非公開化の申し立てを却下し、公開を認めた。公開された映像は、複数の社内会議をまとめたもので、社員が青少年の利用に関する安全性を議論する様子が含まれている。

映像では、元リスク管理担当者のニコラス・チュン氏が「面白いと感じるものが必ずしも健康的とは限らない。プラットフォームの設計上、そうした投稿が奨励され、時に不安を感じる」と発言。また、2022年まで欧州の安全公共政策を担当していたアレクサンドラ・エバンス氏は、TikTokが「強迫的な使用に根ざしている」と指摘し、「優れたアルゴリズムが睡眠、食事、運動、対人交流に影響を与える」と懸念を表明した。

さらに、2021年まで信頼・安全部門で働いていたアシュレン・セプルベダ氏は、アルゴリズムがユーザーの興味に基づくコンテンツを過度に推奨することに警鐘を鳴らした。「フィットネスやダイエット情報を検索すると、すぐに減量コンテンツに変わり、ユーザーのフィードが摂食障害に関連する内容で埋め尽くされ、抜け出すのが困難になる」と述べた。

現グローバルクリエイター宣伝・評判管理責任者のブレット・ピーターズ氏は動画で、「ユーザーに長時間アプリを使ってもらうことが目標」と語り、「コンテンツの多様性を広げ、離れがたい場所にするのが存在意義」と説明する一方、「この目標が必ずしも良好なメンタルヘルスと一致しない」と明言した。

訴訟の主張とTikTokの反論

ノースカロライナ州のジェフ・ジャクソン現司法長官は、この映像が州の主張を裏付けると強調。「ソーシャルメディア企業が子どもの健康を犠牲にして中毒性を高め、利益を最大化しているという我々の主張を証明する」とCNNに語った。訴状では、TikTokがスクリーンタイムの増加による害(睡眠不足、学業や家族関係への影響など)を認識しながら、利用者や保護者に知らせなかったと指摘している。

一方、TikTok広報担当者は映像を「誤解を招く」と反論。「5年前の安全性向上に関する社内討論を意図的に歪めたものだ。青少年と家族向けに70以上の安全機能を導入しているが、司法長官はこれを無視している」と主張した。

この訴訟は、TikTokに対する経済的罰則と不公平な行為の禁止を求めるものだ。コンラッド判事は、TikTokが主張した「従業員のプライバシー保護」を理由とする映像非公開化を認めず、「多少の気まずさは公衆のアクセス権を上回る理由にはならない」と判断した。

米国でのTikTokの不透明な将来

映像公開は、TikTokが米国で禁止の危機に直面するタイミングと重なる。トランプ米大統領は「売却または無効化」法案の執行期限を9月17日まで延長。一方、ホワイトハウスが今週公式TikTokアカウントを開設したことで、トランプ氏のTikTokに対する方針は不透明さを増している。中国共産党政府は、TikTokの親会社バイトダンスがTikTokを売却するかどうかについて公に態度を表明していない。

呉香蓮