英政府は13日に公表した今後の外交方針を包括的にまとめた最新の「統合レビュー(IR)」で、中国を世界秩序に対する「時代を定義付ける挑戦」との認識を示したものの、「脅威」とは位置付けなかった。また、英国の安全保障はウクライナ戦争の結果次第との見解も示した。 写真は2022年11月、ラトビアで実施された北大西洋条約機構(NATO)の軍事演習に参加する英軍(2023年 ロイター/Ints Kalnins)

英、中国を世界秩序に対する「挑戦」と認識 中ロ連携強化を警戒

[サンディエゴ 13日 ロイター] – 英政府は13日に公表した今後の外交方針を包括的にまとめた最新の「統合レビュー(IR)」で、中国を世界秩序に対する「時代を定義付ける挑戦」との認識を示したものの、「脅威」とは位置付けなかった。また、英国の安全保障はウクライナ戦争の結果次第との見解も示した。

英政府は2021年に初めて統合レビューを公表した際、中国を「体系的な競争相手」と表現。今回の報告書では、中国のロシアとの連携強化のほか、ロシアがウクライナ全面侵攻開始後にイランとの連携を強めていることについて警告した。

スナク首相は報告書の序文で「地政学的変化のペース、およびこれが英国と英国民に及ぼす影響の大きさを21年に完全に予見できなかった」とし、「それ以降、ロシアによるウクライナに対する違法な侵攻、エネルギーと食料供給の兵器としての利用、無責任な核のレトリックが、南シナ海と台湾海峡での中国の一段と攻撃的な姿勢と相まって、危険性、無秩序、分断で定義される世界が作り出される恐れがある」と警告した。

訪米中のスナク首相は13日、スカイニュースに対し「中国がわれわれの世界秩序に対する体系的な課題であり、われわれとは根本的に異なる価値を有する国であり、ここ数年間の中国の振る舞いに懸念があることは明らかだ」と述べた。

クレバリー外相は議会で、中国は「ほとんど全ての世界的な問題に関係している」と指摘。「中国共産党が台湾海峡の緊張を煽るなど、軍事的、経済的に一段と攻撃的になっていることを看過することはできない」と述べた。

報告書は「中国共産党率いる中国は、政府の政策や英国民の日常生活のほとんど全ての分野に影響を及ぼす、時代を定義付ける体系的な課題になっている」と指摘。「巨額の新規投資による急速かつ不透明な軍事的近代化を進め、領有権を巡る問題がある南シナ海の島を軍事化し、台湾を巡る目的を達成するための武力行使を放棄することを拒否している」と警告した。

その上で、中国との協力と理解を深める方針には変わりはないとしながらも、「中国が国外で権威主義や自己主張を強める傾向が続けば、一段と難しくなる」とした。

ロシアについては、依然として最も深刻な脅威であり続けていると指摘。「われわれの集団安全保障はウクライナ戦争の結果と本質的に結びついている」とし、「中国はロシアとのパートナーシップを深め、ロシアはウクライナ侵攻をきっかけにイランとの協力関係を深めている。この2つの動きは特に懸念される」とした。

英政府は、スナク首相が米カリフォルニア州サンディエゴで米国のバイデン大統領、およびオーストラリアのアルバニージー首相と安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」を巡る協議を行うのに合わせ統合レビューを公表した。

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