クマムシのイラストレーション(Rebekah Smith)

中国の軍事科学院、「クマムシ」遺伝子をヒト幹細胞に 核戦争に耐える「超人兵士」開発へ

中国の軍事科学研究チームは、高線量の高放射線に耐える微生物「クマムシ」の遺伝子をヒトの胚性幹細胞に組み込み、耐性を著しく向上させたとの実験結果を発表した。さらに実験が進めば、核戦争のもとで放射性降下物にも耐久できる「超人兵士」が誕生する可能性もあるとされる。

中国軍傘下の軍事科学院放射線バイオテクノロジー研究所のユエ・ウェン教授が率いる研究チームが昨年10月に中国語版学術誌「ミリタリーメディカルサイエンス」で実験結果を発表しており、香港の英字新聞「サウスチャイナモーニングポスト」が3月末に報じた。

クマムシは、体長0.1〜1ミリメートルで4対の肢を持つ緩歩動物であり、地球上で最も生存能力が高い生物とされている。「乾眠(クリプトビオシス)」と呼ばれる脱水した仮死状態となると、体内の代謝を一時停止させ、極度の高温や低温、超高圧、宇宙空間、水中、さらに強烈な放射線下でも生存できる。

高度な生存力の秘訣は、放射線などから細胞を保護するタンパク質(Dsup)を生成する遺伝子に由来している。

ユエ氏らの研究チームは、ゲノム編集技術「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)」を用いて、そのような高い生存力を持つクマムシの遺伝子を人工的に培養されたヒト胚細胞に組み入れたという。実験結果によると、ヒトの細胞は意外にもクマムシの遺伝子になじむことが分かった。

研究チームによると、遺伝子解析では実験された細胞の染色体に変異は見られず、細胞は正常に機能し、また特定の発生段階では一般の幹細胞よりも速く成長したという。

「細胞増殖をある程度促進することができる。研究はこれらの発見に基づきさらなるステップに進む」とした。

また研究チームは、実験でクマムシの遺伝子を挿入したヒト胚性細胞に致死量のX線を照射したところ、その90%近くが生き残ったと発表した。

放射性耐性のほか、がんや糖尿病、炎症、パーキンソン病などの病気の発症に関わる酸化ストレスに対し、細胞のDNAを保護する役割を果たすことが可能となったという。

今後は、クマムシの遺伝子を組み入れた幹細胞を血液細胞に変化させていく実験を行うとしている。「原子力事故や核テロに対応する軍人、民間人、救急隊員」が放射線障害リスクに直面するなか生存する確率を高めることを狙う。

これらの実験に対し、匿名の科学者がサウスチャイナモーニングポストに、「ヒトとクマムシの遺伝的な違いから見れば非常に驚くべき結果だ」「今後企業からの資本が入ってさらに研究が進んだ場合、社会に取り返しのつかない影響をもたらす恐れもある」と述べ、実験への懸念を示した。

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