這う這うの体(ほうほうのてい)で逃げる【1分で読める故事成語】

秦王朝が滅亡し、楚漢戦争が勃発している頃、韓信劉邦の命を受けて斉を侵攻し始めました。しかし、劉邦が説客酈食其を派遣して斉との平和交渉を行わせたのを聞き、進軍を止めようとしましたが、蒯通に、「進軍停止命令がまだ降りていなく、斉もきっと無防備でしょうから、この隙に侵攻すべきだ」と説得されました。

そして、斉を平定した韓信は仮の王となりました。劉邦は懐柔のため、韓信を斉王として認め、また、楚に侵攻するよう説得しました。項羽もまた、連合したいという意向を韓信に伝えたのです。
天下の情勢は韓信と深くつながっていることを知った蒯通は、漢王朝を裏切るよう関心を説得しようとしましたが、韓信は、「手厚くしてくれた漢王の恩を忘れて、裏切るわけにはいかない」ときっぱり断りました。

これに対し、蒯通はこのように言いました。

「当時、常山王であった張耳は成安君の陳余と生死を共にすると誓いました。張耳が包囲された時、陳余に助けを求めましたが、救援は来なく、2人は反目し、お互いを攻め合うようになったのです。さんざんな目に遭って、結局敗れた張耳は項嬰を殺し、狼狽しながらあちこちへ逃げ回り、最終的に漢王に身を寄せます。そして、漢王から軍隊を借りてついに陳余の首を斬りました。人の心は計り知れないもので、欲望から生まれた災難はあまりにも多いです。今、あなたは漢王と仲良くしていますが、相手は決して自分に危害を加えたりしないとは思わないでください」

「這う這うの体(ほうほうのてい)で逃げる」とは、ひどく恥をかいたり、さんざんな目にあったりして、慌ててその場を逃げ出すという意味です。

(翻訳編集 天野秀)