このごろ、中国各地で「知らないうちに『ドナー登録』された」と訴える市民が続出している。画像はイメージ画像。「臓器狩り」の様子を模した寸劇で問題の周知を図る法輪功学習者。2018年10月1日、オーストリア・ウィーン市内で撮影 (Photo credit should read JOE KLAMAR/AFP via Getty Images)

政府、海外渡航移植の調査に本腰 専門家「これまでと違う感触」

中国で罪のない人々から臓器を摘出する「臓器狩り」行為への認知が広がるなか、厚生労働省は海外渡航移植の実態調査を行なっている。臓器移植法の改正に向けた動きもあり、本腰を入れる日本政府の対応に専門家は「これまでと違う感触」を感じているという。

中国ではドナー制度が不完全であるにも関わらず、極めて短い待機期間で手術が行われている。当局はかつて死刑囚から臓器を摘出していると主張したが、調査団体の報告によると、ドナーの大多数は違法に拘束された法輪功学習者やウイグル人、チベット人ら良心の囚人である。

重い腰上げた政府

国家ぐるみの人道犯罪である臓器狩りが明らかになってからすでに17年の月日が経つ。日本では長らく法整備が進まなかったが、今年2月に無許可渡航移植あっせんを行なっていたNPO法人が摘発されて以降、国会質疑や会合でたびたび取り上げられるようになった。

現行の臓器移植法の不備が露呈したとして、岸田文雄首相および加藤勝信厚労相は3月、制度見直しが必要だと明言した。翌月には厚労省特別班による海外での渡航移植の実態調査が始まった。

調査は6月中旬まで、日本移植学会など5つの移植関係学会を通じて国内の移植関連300機関を対象に行う。海外渡航移植を受けた外来通院患者の数、その渡航先、患者の予後などを問うものだ。

「海外渡航移植については、マスコミでも大分騒がれたこともあって、非常に関心を持たれていると思う。(中略)各関連の学会や移植後の外来実施施設を通じて、十分な調査に非常に期待している」と厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会委員の一人で小美玉市医療センター病院長・湯沢賢治氏は語っている。

「これまでと違う感触」

中国臓器狩りの調査第一人者であるデービッド・マタス人権弁護士とジャーナリストのイーサン・ガットマン氏は、3月と4月に立て続けに来日した。その詳細を知るETACの鶴田ゆかり氏は取材に対し、過去に幾度となく訪日した2人だが、今回は「これまでとは異なる感触があった」と語った。

鶴田氏は政府要人との意見交換の中で「議員に政府を押してほしい。そうすれば政府は動かざるをえなくなる」といった旨の言葉をかけられたとのこと。臓器移植法は議員立法であるから、その改正も議員主導で進めていくことに期待感を感じたという。

国会でも機運は高まっている。2月21日、衆院厚生労働委員会分会では、石橋林太郎議員(自民)が中国臓器狩り問題について質疑を行った。岸田政権で人権担当補佐官が設けられたことや、対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)の東京会合で中国臓器狩り問題が話題に上がったとし、「日本の国会でもこの問題が前進することを非常に強く望む」と述べた。

過去には山田宏議員や城内実議員が同様の問題を取り上げている。

国会会議録をもとに作成(エポックタイムズ)

臓器狩り摘発は世界の潮流

臓器狩り停止を求める声が国際社会で高まるにつれ、諸外国では法整備の動きが出ている。米下院では3月末、「強制臓器摘出停止法案」が共和・民主両党の圧倒的支持を得て可決した。臓器狩りに関与した者は入国禁止に加え罰金刑や懲役刑が課せられる。

米国の法輪功学習者は「提出から可決まで非常に早く進んだ。この問題に対する米国のゆるぎない姿勢が示された」と語った。この数か月で、英国、カナダでも海外渡航移植を規制する法律が成立した。

前出のマタス氏が来日直前に行った提言は、「日本人が犯罪に関わらないように」と邦人を守るとの観点でまとめられた。患者に対し、渡航移植先の国や病院、移植した臓器といった詳細な情報の提出を求めるほか、集約した情報を公開するといった内容だ。中国問題に詳しい自民党議員は「日本国民を守ることだから実現できるはず。反対する理由もないのでは」と語った。

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