英議会で中共「強制臓器収奪」の座談会 法改正や米英連携の必要性を議論

2026/07/10
更新: 2026/07/10

7月8日、イギリスの元保守党党首、イアン・ダンカン・スミス卿は、英議会で「中国共産党(中共)指導部の思考様式を理解する」と題した座談会を主催した。会にはメディア関係者や法律分野の専門家らが招かれ、議論が交わされた。

スミス卿は「中共には、独自のやり方とルールがある」と述べ、中共の行動は「民主国家の価値観とはまったく異なる」と指摘した。

「私たちは、この問題から決して目を背けてはならない。中共は民主主義諸国に対する脅威であるだけでなく、中国人にとっても脅威である。対処の道を見いだすには、中共の思考様式を深く理解しなければならない」と語った。

主催者であるイギリス法輪大法仏学会の代表、キャロライン・イェーツ氏は、今回の座談会の目的について、イギリス社会に中共の実態を認識してもらい、政府に具体的な対応を促すことにあると説明した。イギリスが結果的に中共の行為に加担することがあってはならないと訴えた。

この日、講演に招かれた3人の専門家は、アメリカとカナダからロンドンを訪れた。いずれも各分野で長年活動し、高い評価を受けてきた人物である。登壇したのは、大紀元のシニアエディターで、ベストセラー『Killed to Order(受注殺人)』の著者であるヤン・ジェキエレク氏、国際人権弁護士でカナダ勲章受章者のデービッド・マタス氏、調査報道記者のイーサン・ガットマン氏である。

7月8日のイギリス議会で開かれた座談会に登壇した、大紀元シニアエディターのヤン・ジェキエレク氏(中央)、国際人権弁護士のデービッド・マタス氏(右)、調査報道記者のイーサン・ガットマン氏(左)(羅元 / 大紀元)

 

すでに2020年、ジェフリー・ナイス卿が議長を務めた独立民間法廷「中国法廷」は、12か月にわたり、強制臓器収奪に関する膨大な証拠を審査した。その結果、「中国各地で、良心の囚人から臓器を強制的に摘出する行為が長年にわたり、大規模に行われてきた。法輪功学習者は臓器供給源の一つであり、主要な供給源であった」と、「全員一致で、疑いの余地なく」結論づけた。

近年、自由主義陣営の国々は対応を進めている。アメリカでは最近、重要な一歩が踏み出された。米上院外交委員会が「法輪功および強制臓器収奪被害者保護法案」を全会一致で可決したのである。同法案は、国務省に対し、中共による強制臓器収奪の犯罪に関する報告書の提出を義務付け、関与した責任者に制裁を科すことを明記している。

中共の「注文に応じた殺害」の実態

ヤン・ジェキエレク氏は、中共が全体主義的な統治と、特定集団を悪者に仕立て上げる手法を利用し、世界で唯一ともいえる産業化された強制臓器収奪システムを作り上げたと述べた。

この「注文に応じた殺害」のシステムは長年にわたり運用されており、被害者には法輪功学習者やウイグル人などが含まれるという。摘出された臓器は、中国の高官や特権層の延命に使われるほか、海外から中国を訪れる「移植ツーリズム」客の需要を満たすためにも利用されていると指摘した。

ジェキエレク氏は著書『受注殺人』の中で、ある裕福なドイツ人女性の事例を挙げている。この女性は長年の飲酒により肝不全に陥った。西側の移植制度では、肝移植を受けるまで数年待たなければならなかった。しかし、2015年から2019年にかけて中国に渡り、そのたびに数か月で肝臓移植を受けたという。結果として、肝臓を3回移植した。

ジェキエレク氏は、通常の国では臓器の供給源の多くが突発的な事故によるものであり、需要に供給が追いつかないと説明した。ところが中国では、臓器移植の待機期間が「数週間」、時には「数日」で数えられる。この異常な速さの背後には、生きた人間を臓器の供給源とする残酷な仕組みがあると述べた。

同氏によれば、中共が移植用臓器のドナーとなる巨大な拘禁システムを構築できた背景には、二つの迫害手段がある。

第一に、特定の集団を異質な存在として扱い、大規模な誹謗中傷によって「非人間化」することである。それにより、社会全体が心理的に暴行を容認しやすくなる。文化大革命期、社会の敵として徹底的な迫害や弾圧の対象となった「黒五類」や、その後の法輪功学習者がその例だという。

第二に、数百万人を収容できる強制収容所や秘密拘禁施設を築くことである。

1999年以前、法輪功の学習者は1億人に達していた。中共の江沢民元党首が「3か月で法輪功を根絶する」「殴り殺しても自殺として扱う」として迫害を始めた後、法輪功学習者は排除の対象とされた。労働改造施設の中で、中共は法輪功学習者に血液型やDNAの検査を強制し、データベースを構築した。そして市場の需要が生じると、それに合わせて生きた人間から臓器を摘出した。

ジェキエレク氏は、研究者らが「収奪型弾圧」と呼ぶこの残虐な手法が、現在では新疆のウイグル人に対しても用いられていると述べた。近年、中共は新疆で各家庭を回り、DNAを強制的に採取しており、その手口は同じだと指摘した。

同氏は、独立民間法廷「中国法廷」の議長を務めたジェフリー・ナイス卿の結論を引用し、各国政府や国際機関に警鐘を鳴らした。現在の中共当局と関わることは、「実質的には犯罪政権と関わることだ」と認識しなければならないという。国際医学界は中国との関係を全面的に見直し、中国の移植関連の学術交流や研修を停止すべきであり、中共が自ら改善するという幻想を持つべきではないと述べた。

人権弁護士、イギリスの法的抜け穴を指摘

著名な国際人権弁護士であるデービッド・マタス氏は、法律の観点から、イギリスの現行法における海外での強制臓器収奪への対応について、包括的な改正案を提示した。

マタス氏は、現行の「2022年保健・介護法」には重大な抜け穴があると分析した。たとえば、同法が制裁対象としているのは「商業取引」に限られている。しかし中共の体制下では、臓器の受益者の多くが中共高官や特権層であり、彼らは臓器を「一銭も支払わずに」得ている可能性がある。現行法では、こうしたケースに対応できないという。

マタス氏は、イギリス政府に対し、現行法の管轄範囲を拡大するよう求めた。また、海外移植における「推定同意」の盲点をなくし、法律の適用対象をイギリス市民から「一時居住者」にまで広げるべきだと主張した。イギリス籍でない関与者がイギリス国内で免責されることを防ぐためである。

具体的な法改正案として、マタス氏は国際的な事例を参考に、イギリスがより厳格な制裁制度を整えるよう求めた。

まず、イスラエルや米テキサス州など5州の立法にならい、「医療保険および保険の制限」を導入すべきだと主張した。海外で臓器移植を受けた人については、公的医療保険や民間保険が、その後の治療費をすべて「補償対象外」とすべきだという。国家資金によって犯罪の後始末を負担してはならないと訴えた。

次に、台湾にならい、現行の移植に関する「選択的報告」を「報告を義務付ける」に改めるべきだと提案した。すなわち、海外でのすべての移植事例について、個人情報を漏らさない形でデータを公開し、実態が不透明なまま放置されることを防ぐ必要があるという。

さらに同氏は、イギリス政府に対し、入国管理、政府調達、学術交流の各分野で規制を強化するよう促した。強制臓器収奪に関与した外国人の入国を禁止し、政府調達から関連業者を排除し、本人の同意を得ていない商業的な人体標本展を全面的に禁止すべきだとした。

医学学術の分野については、国際医学誌が十分に厳格な審査を行っていないと批判した。中国では「臓器を摘出すること自体が処刑の手段となっている」ため、中国の移植界が臓器の出所から強制摘出の可能性を排除できないのであれば、その論文を発表させてはならないとし、イギリスでの立法を提案した。

マタス氏は、WHOの透明性と追跡可能性の原則に基づき、国際社会は「自ら証明しなければならない」という誤った考えに陥るべきではないと述べた。

「中国で臓器移植をめぐる残虐行為が存在することを証明する責任は、イギリスやその検察官にあるのではない。むしろ、中国政府、つまり中共政府こそが、そうした残虐行為が『存在しない』ことを証明する責任を負うべきだ」と語った。

「精密かつ隠蔽された民族浄化」

調査報道記者で作家のイーサン・ガットマン氏は、自身の最新調査について説明した。中国の強制臓器収奪産業の被害対象は、法輪功学習者からウイグル人やカザフ人にまで広がっている。

同氏は、これは中共が少数民族に対して行っている、精密かつ隠蔽した「民族浄化」だと述べた。ガットマン氏は、新疆で拘束された人々のうち、少なくとも25万人がこれにより死亡したと推計している。

ガットマン氏の新著『The Xinjiang Procedure』は、複数の生存者の証言を引用し、新疆の強制収容所では、拘束者が血液検査やDNA検査の結果に基づいて分類され、その後、深夜に「完全に姿を消す」と指摘している。

同氏は、通称「猫組長」の菅原潮氏の証言にも触れた。菅原氏は2007年、北京武装警察総病院で、鎮静剤を投与され、手足の腱を切られた法輪功学習者を目撃したと証言している。医師はその人物について、肝臓移植の「ドナー」と説明した。

ガットマン氏はまた、カザフスタン国境地帯まで自ら車で入り、秘密裏に現地取材を行った。異なる収容所の出身者20人への聞き取りに基づき、毎年、収容者の2.5〜5%が失踪していると推計した。被害者の平均年齢はわずか28歳で、移植市場が求める年齢層と重なる。

同氏は、北京当局が強制収容所を閉鎖したと主張しているものの、実際にはそれを「工場化された監獄」へと転換していると批判した。さらに、火葬場の増設や、空港における「臓器専用の優先搬送ルート」の整備に資金を投じ、人間の臓器を組織的に搾取していると述べた。

ガットマン氏は、西側の大手テクノロジー企業にも批判の矛先を向けた。サーモフィッシャーが最大1千万件分のDNA検査キットを提供し、シスコが中共公安部のためにファイアウォールを構築したと非難した。こうした行為を、かつてナチスに協力したテクノロジー企業になぞらえた。

同氏は会場にいたイギリスの政治家に対し、国際移植界の政策空白を前に、アメリカの立法にならい、今世紀の人道上の大惨事を止めるべきだと呼びかけた。

中共にどう向き合うべきか 専門家がイギリス新政府に助言

イギリスで首相交代と新政権の組閣が迫る中、登壇者らは次期イギリス首相に向けて助言を行った。

マタス氏は、中共のイデオロギーを理解することは「困難な課題」だと述べた。中国とイギリスは根本的に異なり、西側の人々は往々にして自分たちの価値観を相手に当てはめて考え、実情を知らないまま断定してしまうからだという。

同氏は、まず中共の統治下にある中国が、イギリス社会とはまったく異なることを認識しなければならないと述べた。そのうえで、強制臓器収奪の犯罪を真剣に受け止め、行動を起こすべきだと訴えた。

「私は、この問題を重視すべきだと思う」と語った。

マタス氏はまた、臓器移植に関する米英両国の法律の長所と短所についても法的観点から分析し、両国は互いに学び合うことができると述べた。

たとえば、アメリカの法輪功保護法案は関係者への制裁に言及しているが、イギリスには現在、同様の制裁措置がない。一方で、イギリスの「2022年保健・介護法」には域外効力がある。つまり、犯罪行為がイギリス国外で行われた場合でも、イギリスが責任を追及できるという点である。アメリカには同様の規定がない。

またイギリスでは、医師が患者の海外移植を把握した場合、それが合法か違法かにかかわらず、イギリスヒト組織管理局(HTA)に報告しなければならない。アメリカには、これに相当する制度がない。

ジェキエレク氏は、新政府に対し、今回の登壇者らの著作を読むことを勧めた。それらは「中共指導部、そして中共全体の思考をのぞく窓」になる。

同氏はまた、イギリスがロンドンでメガ中共大使館建設を認可したことにも言及し、「これは正気とは思えない」と批判した。

「私は新首相に対し、側近に中共の現実に関する報告書を作成させるよう強く求めたい。あなたが相手にしているのは、普通の政権ではない。従来の方法で交渉できる政権でもなければ、ウィンウィンを望む政権でもない。あらゆる利益を独占し、イギリス、アメリカ、カナダなどを屈服させようとしている政権なのだ」

同氏はさらに、「こうした中共指導者と向き合うとき、彼らが協力の精神で臨んでいるわけではないことを理解しなければならない。彼らは自国民さえも臓器移植の『原材料』と見なし、自分たちがより長く生きるため、また巨額の利益を得るために利用している」と述べた。

ガットマン氏は、イギリスがアメリカと緊密に協力することへの期待を示した。

「私たちは冷静に、緊密に協力し、中国、すなわち中共の拡張を阻止する必要がある。イギリスとアメリカの双方に、情勢を直視する勇気と能力があることを願っている」と語った。

同氏は、中共を嫌悪している一方で、中国人を愛していると述べた。また、かつて北京で暮らした日々を懐かしんでおり、もし将来、中国が民主政権になれば、北京に戻って仕事をしたいと語った。

「私は、あの場所での生活が好きだった」と述べた。