台湾の台北で開かれた論壇で講演する(左から)自衛隊元統合幕僚長・岩崎茂氏、産経新聞台湾支局長の矢板明氏、元防衛相・玉澤徳一郎氏(大紀元)

台湾有事リスクに直面する日本…国民の声が士気を支える=元統合幕僚長

日台間の交流を促進する機関「東京日台交流会」の論壇が7月初旬、台北で開かれた。台湾有事のリスクをテーマに講演した自衛隊元統合幕僚長の岩崎茂氏は、軍事力の要となる士気を支えるのは国民の声だとし、日本では「全国民が話し合わなければならないことだ」と強調した。

岩崎氏は14年10月に退任後、第二次安倍政権の防衛相政策参与、台湾国防部の顧問を歴任。今回ともに訪台した元防衛相・玉澤徳一郎氏によれば、「台湾有事は日本有事」の著名なフレーズを安倍氏に提案したのは岩崎氏だという。

岩崎氏は、軍事力を測る方程式は「士気、装備、練度、兵站」の掛け算だと語った。このなかでも、士気が最も重要であり「士気を決定する最も重要な要素は国民が軍隊をどれだけ支持しているかだ」と述べた。

「戦争は軍人だけが行うものではない。戦闘を指揮する者が固い決意を抱き、国民が軍隊を支持する強い意志を持つことだ」。岩崎氏は、台湾有事を視野に入れて全ての日本国民がこのことについて話し合うべきことだと訴えた。

台湾の友人を励ましに

由緒ある日台友好議員連盟「日華懇」の副会長も務めた玉澤氏は、中国共産党政権が毎日のように台湾に対して三戦(世論戦、心理戦、法律戦)で圧力を加える状況に懸念を示すも、台湾の人々が国防の意識を堅持すれば、中国共産党の作戦に動かされることはないだろうと述べた。

台湾側が強い意思を示すことで「自由と民主を愛する世界中の国々が支援に駆けつけるだろう」と語った。いっぽう、国際社会が手を引いた南ベトナムやアフガニスタンの例を挙げ、「自国民が自国を守る意志を持たなければ、国際社会は関心を向けないだろう」とも付け加えた。

玉澤氏は台湾の人々に向けて、直面する困難を乗り越えるためには結束が最も大切だと訴えた。「硬い意志と団結こそ、台湾を守る最大の力となる」「心を合わせ準備を整えれば、負けることはない」。

85歳と高齢の玉澤氏が台湾へ足を運んだのは、「中国共産党の強権に直面する台湾の友人たちを励ますためだった」と、論壇で通訳を務めた産経新聞台北支局長の矢板明夫氏はSNSにつづっている。「(私たちは)団結し、努力し続けるべきだ」と矢板氏は締めくくった。

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