福島第一原発の処理水保管タンク。2023年1月20日撮影。(Photo by PHILIP FONG/AFP via Getty Images)

中国大使館の発信「極めて無責任」 日本政府、処理水に関し積極的に対抗

日本政府は1日、原発処理水の放出に関し駐日中国大使館が事実及び科学的根拠に基づかないコメントを掲載していたとして、複数のポイントに分けて逐一反論を行なった。政府は「政治的な目的によってIAEAの活動を貶めることは受け入れられない」とし、「原子力の平和的利用の促進を阻害する極めて無責任な主張」であると非難した。

外務省は1日、「海洋拡散、核種の生物濃縮や長期の蓄積」への懸念は「無視できる」ものであり、中国当局が用いる「汚染水」という不適切な文言は「公衆の混乱を避ける」観点から使用を控えるべきだと強調した。

中国大使館の「ALPS処理水には60種類以上の放射性核種が含まれている」「『基準値を満たすこと』と『存在しないこと』は別である」との主張に対し、外務省は「処理前の水に現実的に存在し得る核種(原子核の種類)は29核種」であり、「日本の分析に加え、IAEA及び第三国機関の分析でも、その他の核種は検出されていない」と反論。「処理後に検出されたことのある核種は、29核種のうち9核種だけであり、それらも規制基準を十分に下回るまで浄化できている」と指摘した。

また東京電力が発表するモニタリングデータは信頼できないという中国大使館の主張に対しては、「東京電力のみならず、環境省、原子力規制委員会、水産庁及び福島県がモニタリングを行っている」「放出開始後のモニタリング結果は、ほとんど検出下限値未満であり、検出されたものも極めて低い濃度であり、安全であることが確認されている」と反論した。

さらに、「東京電力のデータの信頼性については、原子力分野において国際的な安全基準の策定・適用を行う権限のあるIAEAのレビューを受けて」おり、「レビューには中国の専門家も参加しており、中国の専門的知見も踏まえた上で評価されたもの」だと指摘している。

モニタリングについて「他の国や国際機関の現場への参加は行われておらず、これでは、真の国際モニタリングとは言えず、透明性を著しく欠いている」との中国政府の主張に対し、外務省は「海洋放出開始後も、東電福島第一原子力発電所におけるIAEA職員の常駐に加え、同発電所からリアルタイムでモニタリング・データを提供している」と指摘。

「IAEAレビューの枠組みの下で、IAEA及びIAEAから選定された複数の第三国分析・研究機関が、処理水中の放射性核種を測定・評価するソースモニタリングの比較評価及び環境中の放射性物質の状況を確認する環境モニタリングの比較評価を実施してきている」と記した。

外務省は実例として2022年11月7日から14日にかけて、IAEA海洋環境研究所の専門家や、フィンランド及び韓国の分析機関の専門家が来日し、現場で試料採取を行なったケースを挙げ「モニタリングは、IAEAを中心としつつ、第三国も参加する国際的・客観的なもの」だと強調した。

政府は「これまでも、中国側から直接提起された指摘には、誠意をもって、科学的根拠に基づき回答してきた」とし、「政治的な目的によってIAEAの活動を貶めることは受け入れられない」と反論。

「IAEAの権威・権限を否定することは、IAEAの安全基準に依拠して設定された中国の安全基準さえも否定するものであり、原子力の平和的利用の促進を阻害する極めて無責任な主張」であると強く非難した。

日本政府はその上で、中国政府に対し「こうした科学的根拠のない発信により人々の不安をいたずらに高めるのではなく、正確な情報を発信するよう」求めていくと明らかにしている。

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