北京展示センターに展示されている15型戦車と若い男性。22年10月撮影 (Photo by NOEL CELIS/AFP via Getty Images)

中国人民解放軍、優秀な卒業生の兵役回避で人材流出に苦慮

中国人民解放軍が技術的に高度なシステムを運用・保守する有能な人材を確保・維持できない状況は、中国共産党の軍事近代化の推進を妨げ、この地域を支配するという野望を阻害する可能性がある、とアナリストたちは主張している。 優秀な新卒者は兵役を敬遠し、より有利で制約の少ない民間企業への就職を希望しており、中国人民解放軍の採用難に対処するための改革は苦しい戦いに直面しているようだ。

ランド研究所の上級国際防衛研究員、ティモシー・ヒース博士はFORUMの取材に対し、「中国人民解放軍は、自他ともに認めるように、兵器や装備を使いこなす教養と技能を備えた人材の確保と維持に苦慮し続けている」とし、 さらに「熟練した人材の不足は、中国人民解放軍が他の地域大国とともに高度な訓練を実施する能力に水を差す可能性があり、その影響力と威信を損なうことになりかねない」と述べた。

中国人民解放軍は、200万人の軍人の大部分を有志に頼っている。 その内訳は、将校と文民が約45万人、下司官(NCO)が85万人、志願兵が70万人となっている。

中国人民解放軍は、必要とされる技術的スキルを持つ人材を確保するため、中国の大学に目を向けている。 しかし、中国のエリート校、清華大学のデータによると、2022年の卒業生8,000人のうち、中国人民解放軍に入隊するのはわずか12人に過ぎないと「エコノミスト」紙は報じている。 2005年以降、清華大学の卒業生で中国人民解放軍に入隊した者は平均16人にすぎない。

中国の2020年国勢調査によると、中国人民解放軍は大卒者をさらに70%増やすという10年来の目標に届かず、2010年以降は57%にとどまっている。

民間企業に比べて給与が低いことに加え、軍隊生活があまりに制限的だと感じる潜在的新兵が多い、と「エコノミスト」誌は報じている。 例えば、中国人民解放軍はインターネットへのアクセスを厳しく制限している。 結婚や離婚をする場合、すべてのスタッフは上司の許可を得なければならない。 志願兵は兵舎に住み、将校や下士官のほとんどは、10年以上勤務した後でなければ配偶者と一緒に暮らすことが許されない。

一方、中国人民解放軍の現役兵士の離職率は高く、教育補助金や兵役後の国家部門の雇用への優遇措置など、新兵を惹きつけるためのインセンティブは、逆に機会を見て軍を去る動機付けとなっているようだ。

「離職率を下げる方法を見つけることは、中国人民解放軍が最高レベルの即応性を確保する上で極めて重要だ。なぜなら、熟練した戦闘部隊を育成するにはかなりの時間がかかるからだ」とヒース氏は言う。 「離職率が高いと、軍隊は高度な技術を磨く代わりに、新兵の再教育に多くの時間を費やすことになる」という。

中国人民解放軍は脱走問題にも苦慮している。 「エコノミスト」誌は、あまりの事態の悪化に中国が脱走者に屈辱を与え、厳罰を公表するメディアキャンペーンを開始したと指摘している。

中国人民解放軍は熟練した人材の流出を食い止める努力を続けるとみられるが、統合戦闘ドクトリンとますます高度化する技術と兵器を備えた軍隊に人員を配置する必要性が高まるにつれ、その仕事は難しくなっている、とヒース氏は指摘する。

同氏は「技術的に進歩した軍隊は、教育を受けた熟練労働者を必要としているが、最も適格な若者らは兵役に魅力を感じていない」と述べ、 「人手不足は、中国人民解放軍の兵士不足を招き、戦闘態勢を確保する能力を制約するだろう」と語った。

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