不動産不況が経済を破壊し、どこにも資金が亡くなったので、次は民衆から? 2024年1月8日、江西省の銀行窓口で現金10万元(約200万円)を預け入れをしようとした女性顧客に、銀行員が「現金の出所」について説明を求めたことが女性のSNS投稿でわかり、ネットで物議を醸している。イメージ画像(VCG/VCG via Getty Images)
観光地運営権まで売却して財政維持に奮闘中

中国地方政府、組織再編に着手 「財政難でリストラ」

 

中国経済が低迷する中、中国の各省・市の地方政府が政府組織を縮小している。

5日、湖北省、四川省など複数の省が政府組織改革会議を開き、各部門、各段階で組織を縮小し、幹部職の数を標準化することを要求した。

これに先立ち、貴州省は関連会議を招集し、省政府の機関再編を1月末までに確定し、市と県政府の機関再編を7月末までに完了するよう指示した。

いっぽう、北京は人員削減と部門別幹部職数の標準化を、甘粛省は人員配置の最適化と組織のスリム化と幹部職数の調整を、雲南省は各種機構の調整と最適化による人員削減と幹部職数の削減を要求した。

これまでに江西、北京、重慶、天津、湖南、貴州、上海、河北、甘粛、雲南など10以上の省が政府機関の再編に着手した。

このようなトップダウンの政府機関再編は、昨年3月に中国当局が発表した組織の「機関改革案」を履行するためのもので、中央レベルの政府機関再編は昨年末、地方レベルの政府機関再編は今年末までに完了しなければならない。

これと関連し、李元華北京師範大学元副教授は「現在、中国政府は財政が底をつき、巨大な官僚組織を運営するには莫大な費用が必要だ」とし、「今回の改編前は、一部の地級市(省・県中間の2級行政単位)の副市長数が30~50人に達していた」と話した。

李元華氏によると、中国はコロナが発生した3年間、極端な封鎖政策を実施し、昨年末に封鎖を解除した後も経済が回復しなかったため、昨年からは中央から地方まで財政が枯渇した。土地販売や各種税金に依存していた地方政府も、この収入源がなくなり、組織を維持するためには人員を削減するしかない状態に陥った。

2023年に入り、中国経済は本格的な低迷期に入った。不動産会社や資産管理会社の債務不履行(デフォルト)事態が相次ぎ、不動産や株式市場は下落が続き、金融市場は一触即発の危機的状況に追い込まれ、地方政府は借金地獄に陥った。

中国メディアは、すでに破産状態に陥った地方政府が少なくないことを認めた。中共による隠蔽のため、実際の数字は不明だが、米民間調査会社ロジウム・グループ(Rhodium Group)によると、昨年、2892の地方政府のインフラ投資会社である地方融資平台(LGFV)の債務は、59兆元(約1150兆円)以上にのぼり、これは中国の GDPの約50%に相当する。

いっぽう、米ゴールドマン・サックスの試算では、融資平台を含む地方政府の負債総額が94兆元(約1880兆円)と報じた。

これに対して、日本国の年間政府予算は112兆円強だ。

李元華氏は「現在、一部の地方政府は観光地の運営権を売却している」と述べ、四川省の例を挙げた。それによると、四川省政府は楽山大仏がある観光名所楽山の運営権を30年間譲渡した。これにより、この地方には今後、政府が資金にできるようなものが、存在しなくなったことを意味する。

ある中央党校教授の10年前の研究によると、当時の中国政府の官民比率は1:18で、民間人18人が官員1人を支えていた。陝西省黄龍県の場合はさらに深刻で、農民9人が官員1人を支えている状況だった。しかし、これまでこのような状況は改善されていない。

李元華氏は、20年前、教育部中央教育研究所に勤務していた当時、研究所には49人の副所長がいたことを明らかにした。

彼は「これまで官僚はあらゆる権益を享受してきたが、これを減らすと不満が出るだろう。しかし、今はこの巨大な官僚組織が機能しなくなり、削減せざるを得ない」と述べた。

誰も住むことのなかった住宅が壊されてゆくのか? (JOHANNES EISELE/AFP via Getty Images)

 

 

 

関連記事
中共外交部の報道官が数日間にわたり、サンフランシスコ平和条約(1951年)の合法性を否定し、国際法上の効力を持つのはカイロ宣言とポツダム宣言であると強調したことが、国際社会や法学界で議論を呼んでいる。日中間で「台湾有事」をめぐる外交的緊張が高まるなか、事態は新たな局面に入った
米下院が社会主義体制の弊害を非難する中、中国共産党からの離脱「三退」は4億5500万人を突破。宗教弾圧や権力集中への国際的懸念が強まる一方、中国社会では静かな体制離れが広がっている
トランプ大統領と習近平の11月24日電話会談で台湾問題が再注目。中国は高市首相の「台湾有事」発言に反発し、日米間に楔を打ち込もうとしたが北京の外交攻勢は空回りした
中国駐日本大使館の、X(旧Twitter)で日本を名指しで批判する投稿が物議を醸している。台湾政策を巡る日本の政治家への撤回要求から、尖閣諸島の領有主張、国連憲章の「敵国条項」の持ち出しにまで及び、いずれも国際社会の一般的な認識とは距離のある内容に
中共の官製メディアは、台湾有事は「存立危機事態」に該当するとの高市早苗首相の国会答弁に対し、高市氏への個人攻撃を含んだ内容を相次ぎ報道し攻勢。SNS上では、新華社を筆頭に中共メディアの高市氏および日本への挑発的な報道について、強い遺憾の声やメディアの品格を疑う声も出ている。