昨年、最後の取引日(12月29日)、中国本土の銀行株が全体的に低調になる中、福建省財政部の子会社である中国興業銀行の株価が珍しくストップ高となり、市場の関心を呼んだ(Photo credit should read STR/AFP/Getty Images)

上海株式市場の「大混乱」 国有企業が背後で不正な株取引

上海証券取引所 株価操作事件

昨年、最後の取引日(12月29日)、中国本土の銀行株が全体的に低調になる中、福建省財政部の子会社である中国興業銀行の株価が珍しくストップ高となり、市場の関心を呼んだ。 

中国興業銀行は中国福建省福州市に本社を置く中国の大手銀行の一つだ。

公式通達によると、興業銀行のストップ高は実際には操作されたもので、黒幕は福建省国有資産監督管理委員会(福建省国資委員会)の傘下企業だった。

1月6日、興業銀行のストップ高の真相が明らかになった。上海証券取引所は6日、「市場秩序を乱した」として、福建港湾グループと傘下の4つの子会社に8日から6か月間、証券口座取引を全面禁止する処分を下した。

公告によると、4つの子会社はグループの決定により、興業銀行の株式を大量購入し、株価を引き上げたことが分かった。

これに先立ち、昨年12月29日、最終取引日である中国A株(内国人投資家向け株式)に上場された興業銀行の株価が前取引日比10%以上急騰しており、取引が停止されていた。

昨年末、中国の銀行株のほとんどが下落する中、興業銀行だけがこの日「奇跡の一日」を実現し、投資家の非常な関心を集めたが、この銀行の大株主である国営企業が株価を操作していたことが明らかになった。

中国も日本と同様に株価変動幅制限制度を実施する。日本は制限される上下の値幅は、基準価格によって異なるが、概ね15%〜30%がひとつの目安となっている。一方、中国はA株を上下10%に制限している。中国では当日10%上昇して上限価格に達することを「漲停」と呼び、この価格で取引することを漲停価格取引と呼ぶ。

上海証券取引所の調査によると、先月29日、「福建港口集団」名義の証券口座が31回にわたり、興業銀行株式1813億5100万株を当日の取引最高値で購入した。

取引量は1330億6700万株で、この日の共同入札締め切り期間全体の株式取引量の99.99%を占め、取引規模は2億1600万元(約44億円)に達した。この日、興業銀行の株価は前日比9.7%上昇した。

特に、取引終了1分前、興業銀行の株式への9999件の超大型買い注文が発生した。

これにより、興業銀行の株価は1株当たり14.78元(約300円)から16.21元(約330円)に急騰し、取引終了20秒で上昇幅が0.27%から9.97%に拡大した。

微博にシェアされた昨年最終取引日当日の興業銀行の株価グラフ、直角に9.97%上昇している

当時、この事件が主要経済紙に一斉に報道され、投資家の非常な関心が続いたため、興業銀行側も「我々も理由が分からない」と釈明するほどだった。

福建港口集団は福建省国資委員会の傘下機関で、福建省の中枢企業である。

同社は傘下の子会社を利用して昨年11月末まで約1年余り、興業銀行の株式を5億5900万株購入し、既存の株式約2千万株を加え、全体の持分2.8%で10番目の株主となった。

福建港口集団は今回の株価操作と関連し、何の立場も発表していない。

ただ、ソーシャルメディアで中国の個人投資家は、福建港口集団が年末の会計帳簿を良くするために今回の株価操作を起こしたという反応を示している。

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